光学技術に強みを持つニコンが本気で作った“常識破り”の金属3Dプリンタ:光加工機「Lasermeister 100A」(2/3 ページ)
ニコンは、金属材料の付加積層造形をはじめとした多様な金属加工機能を提供する光加工機「Lasermeister 100A」の販売を開始した。なぜ、ニコンが金属3Dプリンタを開発するに至ったのか? その背景や狙いについて開発担当者に聞いた。
半導体製造装置の開発で当たり前のようにやってきたことが差別化に
Lasermeister 100Aは、金属材料の積層造形(3Dプリンティング)に加え、レーザー刻印(マーキング)、研磨、溶接などの金属加工機能を提供する。ここでは金属積層造形を中心にその機能や特長を紹介していく。
Lasermeister 100Aの積層造形は、金属3Dプリンタで主流のパウダーベッド方式ではなく、レーザー照射と金属粉体の吹き付けを同時に行いながら積層造形するLMD(Laser Metal Deposition)方式を採用する。ベースプレートの上に一から造形を行う一般的な3Dプリンティング(単純積層造形)に加え、既にあるもの(既存品)に対して別の形状を新たに付け加える“付加積層造形”を行うことが可能である。
「通常、LMD方式だと金属粉体を溶解して肉盛りし、後から形状をミリングで整えることが多い。また、平板のようなものを造形すると内部の熱分布の違いにより、溶融プールの領域が変わってしまい仕上がりがガタガタになってしまう。そこで、Lasermeister 100Aでは造形物内部の温度分布を予測し、熱が一定になるようにレーザーの出力を制御している。これまで半導体製造装置の開発で当たり前のようにやってきたCAEを活用した解析の知見やレーザー設計のノウハウが、Lasermeister 100Aの要素技術開発に生かされている」と長坂氏は述べる。
また、高品質な造形をサポートするのに不可欠なパウダー供給機も独自開発。材料となる金属粉体は本体下部に格納されており、パウダー供給機により金属粉体を均一かつ安定的に供給することにより、垂れや欠けの発生を抑制し、造形精度の向上を可能とする。
造形材料となる金属粉体は現在、「SUS316L」がニコンから提供されており、付加積層造形を行う際の母材としてはSUS系、ハイス鋼、炭素鋼をサポートする。「今後ニーズを見ながら造形材料のラインアップ拡充や、対応母材の幅を増やしていきたい」(長坂氏)という。
“誰でも”“手軽に”を可能にする金属3Dプリンタ
付加積層造形を例に実際の造形手順を大まかに説明すると、
- 母材を庫内(ワークスペース)に入れる
- 庫内のステレオカメラで母材の形状や位置を画像認識
- 取得した母材の点群データを基に寸法を数値入力して3Dモデル化
- 母材に付加するモデル形状(STL)を読み込み、どこに配置するかを座標指定
- スライス条件などを設定し、Gコードを生成
- Lasermeister 100AにGコードを転送し、造形開始
となる(※2)。
※2:イメージしやすいように手順を大まかにまとめている。また、造形開始の前準備として庫内にN2を充填(じゅうてん)する必要がある。庫内の酸素濃度が一定値まで下がるとN2の供給は自動的に停止する。
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