組み込み機器で学習できるAI「DBT」、予測精度1.5倍の「DBT-HQ」を投入:人工知能ニュース
AIベンチャーのエイシングは、組み込み機器などのプロセッサでAIの推論実行だけでなく学習も行える同社の独自技術「DBT」において、従来比で予測精度を50%向上できる「DBT-HQ」を追加すると発表した。
AI(人工知能)ベンチャーのエイシングは2019年5月31日、組み込み機器などのプロセッサでAIの推論実行だけでなく学習も行える同社の独自技術「DBT(Deep Binary Tree)」において、従来と比べて予測精度を50%向上できる「DBT-HQ(High Quality)」を新たに加えると発表した。
現在のAI技術の中核を成す機械学習や深層学習は、サーバやクラウドなどの高い計算処理能力を利用して行うことが前提になっている。一方、学習の結果として得られた推論アルゴリズムについては、「組み込みAI」「エッジAI」という形で組み込み機器上でも実行できることが多い。
DBTは、サーバやクラウドと比べて計算処理能力が限られる組み込み機器上でも学習を行えるAI技術である。安価な組み込み開発ボードである「Raspberry Pi Zero」にDBTを実装する場合、学習は50μ〜200μs、推論は1μ〜5μsで応答可能であり、データサイエンティストなどのAI専門家によるパラメータ調整が不要、深層学習では難しい追加学習も可能といった特徴も備えている。
また、オムロンやデンソー、JR東日本など採用企業も着実に増えつつあり、DBTによるアプリケーション開発を容易に行えるAIモジュール「AiiR(AI in Real time:エアー)チップ」も2019年1月に発表している※)。
※)関連記事:ラズパイゼロで推論も学習もできる組み込みAI「DBT」、“AIチップ”で開発容易に
今回発表したDBT-HQは、これまで展開してきた学習と予測処理が高速な「DBT-HS(High Speed)」と比べて予測精度の向上が可能なことを特徴としている。DBT-HSは、その高速性能に対して、サーバやクラウドなどで学習を行った推論アルゴリズムと比べて予測精度が劣るという課題があった。この課題を解決すべく開発したDBT-HQは、自動運転車や産業機械への導入に対応可能な学習と予測処理の高速性能を保ちつつ、より高い予測精度を実現した。
実際に、手書き英字の特徴量からアルファベットを特定する検証では、DBT-HSが63.0%の正解率だったのに対して、DBT-HQは50%増となる90.6%となった。使用するデータによって精度の差に変化はあるものの、DBT-HQはDBT-HSに対して約10〜50%の学習と予測の精度が向上している結果が得られ、クラウドを用いた学習に近い予測精度を達成できたという。
今後DBT-HQは、リアルタイム予測とより精度の高い予測を必要とする自動運転車や産業機械への導入に適していることから、モビリティ業界や製造業界を中心に提案を進める。また、高速処理を得意とするDBT-HSについても、高精度の予測が可能なDBT-HQとともに、顧客の導入目的や適応対象に合わせて提案するとしている。
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