ストップウォッチがいらない「PTS法」は標準時間による作業改善の原点:よくわかる「標準時間」のはなし(10)(3/4 ページ)
日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第10回は、標準時間の測定結果が主観によって左右されず、ストップウォッチもいらない「既定時間標準法(PTS法)」について説明する。
2.2 WF法による分析の例
WF法による分析事例について簡単に説明します。例えば「工具を取るために、腕を13インチ動かす」という動作は“A13D”と分析されます。表2を参照すると、この例の場合は、ワーク・ファクター数は1個の欄と距離欄の13インチの欄から標準時間として67が得られます。すなわち、動作は0.0067分で行うのが標準動作であるということになります。
また、ワーク・ファクターであるW、D、S、P、Uは、おのおの1個として“A13DSU”と“A13DPW”とでは、動作の性質は全く異なりますが、ワーク・ファクター数は3個で、標準時間は表から105となります。なお、WF法の時間単位は、1WFU=0.0001分です。
2.3 WF法のまとめ
WF法をまとめて図示すると図1のようになります。しかし、実際の動作は、必ずしも分類した身体の一部のみで行われるものではなく、幾つかの身体部位が同時に動作することが多いものです。例えば、胴を曲げて足元に置いてある物をとる場合は、胴、腕、指などが同時に動きます。
また、WF分析は、140余りに及ぶルールに沿って行わなければ正しい作業時間を決定できません。WF法は、時間を測るのではなく、動作分析を行うことですので、作業改善に非常な威力を持っており、この魅力にとらわれて“WF分析技術”を十分に身に付けないうちに使ってみたがる傾向にありますが、これは絶対に慎むべきことです。事前に学習と実地訓練をシッカリ受けた後に、活用していくように心掛けることが大切です。また、WF法には次のような特徴があります。
- 直接時間分析は、ストップウォッチを使い実際に行われている作業を観測するために不愉快な感じを与えてしまいますが、WF法ではストップウォッチを使用しません。このため作業者に与える心理的な負担を解消できるので大きな利点といえます
- 作業測定者の主観に影響されないので、標準時間の設定基準に一貫性があります
- 標準時間についての不平が減少します
- 作業改善の分析手法として効果的です
- 生産を開始する前に正確な時間を見積もることができます
- 作業方法が変わっても、その部分だけの分析を行うことによって従来のデータをそのまま利用することができます
- WF分析に次第に慣れていけば、ストップウォッチ法よりも短時間で標準時間を設定できるようになります
- 公平な賃金制度の基礎として、活用することができます
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