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人体通信で医療IoT、加速する医療機器のモバイル化――MEDTEC Japan 2019レポートMEDTEC Japan 2019レポート(1/3 ページ)

医療機器の設計・製造に関するアジア最大級の展示会「MEDTEC Japan 2019」が2019年3月18日〜3月20日に開催された。本稿では、同展示会のレポートとして、医療エレクトロニクス関連の展示を中心に紹介する。

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 UBMジャパンが主催する「MEDTEC Japan」は、医療機器の設計・製造に関するアジア最大級の展示会だ。「MEDTEC Japan 2019」(2019年3月18日〜3月20日、東京ビッグサイト)では、国内外の523社/団体が出展。事務局の発表によると、開催期間中は延べ2万5407人が足を運んだ。本稿は、同展示会のレポートとして、医療エレクトロニクス関連の展示を中心に紹介する。

医療IoTの課題を解決する無線規格「SmartBAN」

SmartBAN実験キット
SmartBAN実験キット(クリックで拡大)

 IoT(モノのインターネット)の普及により、医療分野でも多種多様なセンサーが無線で通信することが増えている。しかし、複数センサーを使用している場合、センサー同士が干渉することもあり、医療現場において生体データをセンシングする場合は有線によるデータ取得が一般的だった。

 そうした課題を解決する無線規格が、人体に近い範囲(約2m)で通信を行うために開発されたネットワーク規格である「BAN(Body Area Network)」だ。

 東芝デベロップメントエンジニアリングは、次世代型BAN規格「SmartBAN」に対応した実験キットを展示していた。SmartBANとは、欧州電気通信標準化機構(ETSI)が2015年に規格化した生体情報取得に適した無線通信規格。複数センサーを高精度で時間同期できることを特徴とする。ハブを中心としたスター型のネットワークトポロジーで、最大16台のセンサー間の無線通信を可能にする。

スマートフォンによる表示例
スマートフォンによる表示例(クリックで拡大)

 実験キットは、心電位センサー、加速度センサー、脈波センサーの3種類のセンサーが高精度に時間同期し、データを計測可能。SmartBAN通信で収集したデータをスマートフォンでグラフィカルに表示するもの。CSV形式で保存することもでき、実データを見ながら同期精度を検証できる点が特徴だ。「時間同期の精度も高く、プラスマイナス200マイクロ秒という高精度の同期が実現できる」(同社の説明員)。

 介護施設内や自動運転時の体調監視などの用途が想定されているSmartBANは現在、広島市立大学との産学連携で開発、実験を実施中だ。


モバイル型医療機器の最新動向

 ソシオネクストは、モバイル医療機器ソリューション群「viewphii(ビューフィー)」などを出展していた。viewphiiシリーズは、小型、軽量、ケーブルレス端末で非侵襲の各種モニタリングを実現するモバイル医療機器ソリューションとして、医療機器メーカー向けデザインキットとして提供されている。

 今回初めて展示されたのが「血管機能検査デザインキット」だ。このキットは、2本の指を入れてセンサーで血流を図ることで、血流の良しあしやストレスチェックなどの分析に用いる基礎データを抽出し、血管機能の異常や衰えなどを判別する半導体デバイスである。札幌医科大学の協力を得て、2015年ごろから研究開発を開発した。

血管機能検査デザインキット
血管機能検査デザインキット(クリックで拡大)

 血管機能検査装置としては、すでに海外製品が存在する。同社の説明員によると「既存の機器は腕帯(カフ)を装着して測定する方法が取られており、患者への圧迫感がある。このデザインキットでは、2本の指に装着するだけで既存ツールと同等の精度で測定可能。また、小型化や低消費電力化などに工夫を凝らした」という。

 今回の出展での反響については、血管機能検査自体がまだよく知られていないことが分かったと説明した。今後、さらに改良を重ねてモバイル化を図り、医療機器や製造受託メーカー、代理店などに訴求していく。

 また、同社はviewphiiのモバイル超音波画像ソリューションである「viewphii US」を展示。viewphii USの特徴は、ケーブルレスであることと、画像生成処理の部分をSoCでワンチップ化して搭載している点だ。より浅い部分を見たいというニーズに応えて、深さ20mm部分の拡大表示を可能にした。また、タブレット端末との接続機能を強化したり、新しい接続方法に切り替えたりするなどの改良が施されていた。

モバイル超音波画像ソリューション「viewphii US」
モバイル超音波画像ソリューション「viewphii US」(クリックで拡大)

 日本電波工業は、2018年はモックアップ展示だった「リニア型プローブ」の最新バージョンを展示した。

 「他社との差別化要因としては、システム構成をシンプルにしてより小型化している点やUSB接続によるタブレットで表示が可能な点。無線通信の場合、バッテリーを搭載する必要があるが、その分をカットすることでより小型化した」(同社の説明員)。2019年度中にはリリースする予定だという。

 同社は、超音波を送受信する回路を組み込んだ超音波プローブを提供する医療機器用部品のサプライヤーだ。測定機器のモバイル化の流れについて、「施設内の診断用装置と持ち運びがしやすいモバイル型の二極化が進んでいる。高精度が求められる施設内装置の従来のビジネスは継続する。在宅医療・介護などの地域医療にシフトしているので、携帯性に優れた機器へのニーズにも対応していく」という。

日本電波工業のモバイル超音波機器
日本電波工業のモバイル超音波機器(クリックで拡大)

 今後も機能拡張を図り、血管描出や軟部組織描出、妊婦の腹部観察などの用途を中心に利用用途を広げていく計画。コンベックス型プローブの次期モデルも2019年度内に投入する予定だ。

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