自動車業界2019年度の採用動向を読む:モノづくり業界転職トレンド(8)(1/2 ページ)
活況を呈した2018年度における自動車業界の転職市場。2019年度は活況を維持するのか、あるいは何らかの変化が予想されるのだろうか。転職コンサルタントに話を聞いた。
前回は2018年度の自動車業界の転職市場を振り返った。では2019年度は活況を維持するのか、あるいは何らかの変化が予想されるのだろうか。
自動車業界における採用動向の見通しについて、自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイックの人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏に聞いた。
採用枠は現状維持、もしく微減
まず、2019年度の採用動向は全体的にどのような状況と予測されるのか。関寺氏は「どの企業も、技術者を中心にまだ人手不足感はある。計画上の採用予定数では、昨年維持もしくは微減という企業が多い」と話す。「微減」の理由の1つは、2017年度と2018年度が過去最高レベルの求人数であったこと。そのため、直近2年間と比較すると若干減少する可能性がある。もう一つの理由は、米中貿易摩擦やヨーロッパ全体の景気の不透明感などもあり、採用側のマインドとして慎重になっていることだ。しかし下降トレンドというほどではなく、基本的には今年度も活況といえそうだ。
職種別ではどうか。「組み込みソフトウェア系エンジニアに限って言えば、間違いなく募集は増える。電気系は横ばい、または企業によっては増加。機械系や生産技術系は、現状維持、もしくは微減」と関寺氏。機械系や生産技術系のエンジニアは、もともと募集枠の多かった職種なので、多少減少する可能性があるというのが関寺氏の見方だ。
では、キャリア採用とポテンシャル採用では違いはあるのか。即戦力となるキャリア採用については、社内で不足している技術などを中心に慢性的な枯渇感があり、活況は続く見通し。一方、比較的若い人材を採用して育てるポテンシャル採用は、若干減少する可能性がある。減少理由の1つは、通年採用という企業もでてきているものの、全体としては2020年3月卒の新卒採用の状況がまだ読めないこと。新卒の不足分を補う意味合いの強いポテンシャル採用については控えめになることが考えられる。もう一つの理由は、採用数自体を増やすことに慎重になっているため、限られた採用枠の使い方としては、即戦力となるキャリア採用に偏る傾向があることだ。
日系企業と外資系企業の採用意欲に差はあるだろうか。日系企業では、エンジニアはまだまだ足りない状況で、採用意欲は引き続き高いと見てよさそうだ。しかし外資系企業は事情が異なる。日系完成車メーカーのサプライヤーである外資系企業は、設計開発や生産を海外で行っていることが多く、直接開発に関わるエンジニアの求人自体がそもそも多くない。外資系の募集は、受注活動を担えるような技術を分かっているセールスの人材、あるいはプロジェクトをマネジメントできるエンジニアを募集する傾向があるが、現在は自動車産業全体の株価が下落気味で、特に投資家の意見が強い外資系では投資しにくい状況になっているため、日系企業に比べると採用意欲は低いと考えられる。
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