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自動車業界の転職市場、2018年度はどんな年だったかモノづくり業界転職トレンド(7)(1/2 ページ)

活況を呈する自動車業界の転職市場。2018年度はどのような特徴があったのか。過去6回の連載テーマを総括するカタチで、転職コンサルタントに話を聞いた。

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 これまで6回にわたり、活況を呈する自動車業界の転職市場をさまざまな観点から見てきた。2018年度は、どのような傾向が見られた年だったのか。自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイックの人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏に、2018年度に見られた特徴を聞いた。

クイック 人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏
クイック 人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏

生産技術の求人件数は前年度比20%超増加

 自動車業界の転職市場における2018年度の特徴の1つ目は、生産技術の求人件数が増加したことである。同社のデータによると、業界全体の求人件数は前年度と比較して約10%増えているなかで、特に生産技術の求人件数は20%以上増加している。関寺氏は「生産の効率化、グローバル対応、生産体制の強化。この3つが大きな要因」と話す。

 まず、生産の効率化の背景にあるのは、将来深刻になるであろう人材不足である。特に、以前は地元の人を採用することでまかなえていた地方の工場は、厳しい状況になるだろう。「将来的な人材不足を回避するために、工場の自動化、IT化を推進できる人材を今のうちに採用しようと考えている企業は多い」(関寺氏)。熟練者のノウハウや技術の承継問題についても、引き継ぐための人材を集めるという考え方から、できるだけ形式知化するという方向に変化してきている。人が少ないことを前提にした仕組みを作るための先行投資ということになるだろう。

 またサプライヤーも含めた日本の自動車関連企業がグローバル化していくなかで、現地生産のための自社工場、あるいは取引先の工場を改善していくためには、生産技術に詳しい人材を増強する必要がある。同時に、極めて高いレベルで要求される安全性や品質に対応するには、生産体制を強化しなければならない。

 ではどのような人材が必要とされているのか。生産技術分野でのIT化推進を経験している人や、海外工場への赴任経験がある人の市場価値は高い。しかし、現状ではこのような人材は稀(まれ)と言わざるを得ない。工場のIT化はまだまだこれからという状況だし、海外経験者は社内でも貴重で流動性が低いからだ。

 しかし逆に見れば、非常に多様な人材に可能性があるとも言える。例えば自動化、IT化には、生産技術職の経験者はもちろん、工場の自動化に関連する設備や装置を開発していた人や、ネットワークインフラの構築経験がある人、産業用ロボットに詳しい人、上流の生産管理の経験がある人、あるいは物流倉庫などの自動化や改善を経験している人、効率化における課題の抽出などコンサルティングに近い役割を担える人など、異業種も含めて非常に幅広い人材が必要とされている。

 グローバル対応については、海外で即戦力となる人材の採用ニーズもあるが、指導する立場として赴任するため、自社の製品や生産について熟知している方が望ましいだろう。むしろ国内でスキルやノウハウを蓄えた優秀な人材を海外に送り、空いてしまうポストを採用するというケースが多いようだ。

業界全体の求人件数のうち日系企業が7割超

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