ピークアウトする北米自動車市場、主戦場はセダンからSUVへ:IHS Future Mobility Insight(12)(4/4 ページ)
2018年がピークとなった米国経済と合わせて、2019年以降の米国の自動車市場も減衰に転じる。その米国自動車市場では、セダンからSUVへの移行が急激に進んでおり、自動車メーカー各社の生産戦略にも影響を与えている。
テスラが年産50万台を実現するためのハードルは高い
現代自動車(Hyundai Motor)グループは、生産台数の予測では若干増えている。同グループは、一時期インセンティブを低く設定し、フリート販売も抑制する施策を行った。このため、販売数が振るわない時期があった。今後は他社と同様SUVを投入し、ピックアップトラック市場にも進出するので、生産数は伸びると見てよいだろう。
欧州メーカーは、BMWとダイムラー(Daimler)が北米で生産する車両の一定数を中国に輸出しているが、今後は中国現地生産に移管する可能性が高い。また、買い替え需要が振るわないことが顕在化してきているというリスクがある。
新興メーカーであるテスラは、2018年におけるモデル3の量産が、予想よりも少し早く本格化したことがトピックになるだろう。しかし、新開発のEVである以上、既存の内燃機関車と同様のタクトで生産する技術を確立するのにはまだ少し時間がかかりそうだ。年間50万台規模の生産を安定的に実現するには、非常に高い技術が必要となる。
また、2021〜2022年になると、欧州の高級車メーカーを中心にテスラ対抗車がぞくぞくと登場することが予測される。その時、EVの勢力図はかなりダイナミックに変化していると考えて良いだろう。
“セダンがリスク”は各社共通、ただし移行先のSUV市場は激戦必至
ここまで、北米における自動車生産の展望を紹介してきた。
ここで、市場に大きな影響を与えているものの1つに、消費者の嗜好の変化があることを再度ご確認いただきたい。具体的には、セダンからSUVへ消費者の関心が移ったことだ。
セダンの需要は限られた高級車の市場には残るが、ボリュームゾーンからは消えた。このため、これまでセダンを中心にモデルを展開していたメーカーがSUVを開発する必要に追われているのが現在の状況だ。
ただし、セダンに比べSUVは、個性あるボディーをデザインするのが難しいともいえる。また、各社が新モデルを投入することで、このカテゴリーでの競争が激しくなることは容易に予測できる。
その場合、各自動車メーカーとディーラーはどのような戦術に出るのか。かつてのように値引き合戦や販売奨励金の増加に頼るのか。それとも、新しい一手があるのか。景気の低迷や各種の規制などの動きをにらみながら各社がどのような施策を打ち出すのか、興味を持って注目したい。
プロフィール
武谷 匡城(たけたに まさき) IHS Markit Director, Automotive Research and Analysis
米国ミシガン州デトロイト市郊外に在住し、30年以上に渡って米国を中心に世界自動車市場調査に加え、各自動車メーカーの商品企画、開発、生産、販売及びマーケティングに関する戦略分析を行う。
https://ihsmarkit.com/ja/topic/automotive-thoughtleaders.html
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