全長10mの超長尺多関節ロボットアームで水平方向10kgの保持に成功:ロボット開発ニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構と東京工業大学は、全長10mの超長尺多関節ロボットアームで、水平方向に10kgの重量物を保持できたと発表した。今後、人による作業が難しい大規模構造物の点検作業や廃炉調査への応用が期待される。
新エネルギー・産業技術総合開発機構と東京工業大学は2019年3月13日、全長10mの超長尺多関節ロボットアームで、水平方向に10kgの重量物を保持できたと発表した。
両者が2018年9月に開発した超長尺多関節ロボットアームは、アーム全長が10m、直径20cm、重量300kgで、可動域は最大高さ10m、水平方向に8mだ。今回、このロボットアームの手先で、10kgの物体を水平方向に保持できることを実証した。
長尺のロボットアームは、テコの原理が働くため、重量物の保持は困難とされてきた。今回、複数の化学繊維ロープを関節の滑車に巻きかけ、荷重を分散して支えることで10kgの物体を保持することに成功した。ロープによる関節駆動機構は、重い駆動部を根元部分に集中して配置できるため、アーム本体を軽量化できる。今後は、水平方向に保持するだけでなく、重量物の持ち上げや運搬も可能にする技術を開発していく。
このロボットアームは、細長く、多くの関節を持つため、狭い場所に進入して探査したり、障害物を回避したりできる。10kgの重量物を保持できることが実証されたことにより、老朽化した橋梁やトンネルなど、人による作業が難しい大規模構造物の点検作業などへの応用が期待される。
さらに、2019年度には、福島県にある日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センターで、同ロボットアームの手先にカメラやセンサーを取り付けて廃炉調査に利用できるか検討する予定だ。
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