自動車に次ぐ輸出産業となるか、「スマート治療室」の最上位モデルが完成:製造業IoT(2/3 ページ)
東京女子医科大学、日本医療研究開発機構(AMED)、デンソー、日立製作所は、IoTを活用して手術の精度と安全性を向上させる「スマート治療室」の「ハイパーモデル」を東京女子医科大学病院に設置し、2019年2月から臨床研究開始したと発表した。
スマート治療室で「従来と比べて2倍以上の症例をこなせる」
スマート治療室は、IoTを活用して各種の医療機器や設備を接続、連携させることで、手術の進行や患者の状況などの情報を瞬時に時系列をそろえて整理統合し、医師やスタッフ間で共有できる総合的な医療システムだ。
手術室などの現場では、多種多様な医療機器、設備から発生する膨大な情報を、医師やスタッフが限られた時間内に判断しつつ治療を行っているという課題がある。例えば、「診断」と「治療」の作業が独立しているため、手術中にリアルタイムの診断情報に基づく高度な治療判断が難しいことなどが挙げられる。手術室にあるさまざまな医療機器をIoTによって連携させ、医療スタッフにそれらの情報をリアルタイムかつ統合的に提供することが、スマート治療室の開発目的となる。
スマート治療室は、AMEDの「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」のプロジェクト「安全性と医療効率の向上を両立するスマート治療室の開発」として、5大学/11社が参画し、2014年度から5年間かけて開発が進められてきた。
これまで、2016年6月に広島大学に「ベーシックモデル」を、2018年7月に信州大学医学部附属病院に「スタンダードモデル」を導入している。今回のハイパーモデルは、スタンダードモデルを基に、ロボット化やAI支援などとの組み合わせをも想定した最上位モデルとなる。
東京女子医科大学 理事長の岩本絹子氏は「スマート治療室のベースになったのは2000年に開発されたインテリジェント手術室だ。これまで当大学病院では、インテリジェント手術室で1960件の症例を積み重ねている。そして、スマート治療室のハイパーモデルを設置した第一病棟と、今後建設を予定している第二病棟をつなげて次世代の手術場としていく考えだ」と語る。また、東京女子医科大学 病院長の田邉一成氏も「スマート治療室のハイパーモデルほどのインテリジェンスサージェリーは他にない。困難な脳神経外科の症例を従来と比べて2倍以上こなせるのではないか。第二病棟は5〜6年後に完成する予定だが、その際にはハイパーモデルを中心に全てをネットワーク化した手術場にしたい」と意気込む。
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