中小製造業とスタートアップは最強タッグ!? AIやIoTの素早い活用が可能に:製造業IoT(2/3 ページ)
関東経済産業局は、関東圏の中小製造業とスタートアップによるマッチング事業プロジェクトの成果発表イベントを実施。2組のマッチング事例発表の他、中小製造業3社とスタートアップ3社によるパネルディスカッションも開催され、連携のメリットなどが語られた。
プレス加工機の故障を未然に防ぐIoTソリューション
1973年創業のしのはらプレスサービスは、プレス機械の法令点検代行やメンテンス、改修を行う企業だ。通常、プレス加工機は、エンドユーザーが日常の中で行う点検とは別に、年1回法令点検を行うことが義務付けられている。法令点検では専門のスタッフがメンテナンスを行うが、翌年の検査までの間に故障リスクをタイムリーに検知する仕組みがないことが課題になっていた。
そこで同社は、2017年にセンサーを用いた異常検知システム「PM system」を開発した。同システムでは、これまでのメンテナンス実績に基づいたしきい値を各種センサーに設定しており、異常を検知した場合には警告や非常停止などの処理を自動で行う。導入先に複数社の加工機がある場合でも一元的に管理できるため、エンドユーザーはメーカーごとに監視システムを導入するといった手間が省け、1つのシステムで全てのプレス加工機を管理できるメリットがある。
PM systemの次のステップとして、センサーから収集したデータをクラウド上に保存し、エンドユーザーが遠隔地からでも稼働状況を監視できる仕組みを検討していたが、大手ベンダーのパッケージは導入コストが非常に高いことがネックになっていたという。
今回のプロジェクトでは、スタートアップであるフリックケアの紹介を受け、PM systemにクラウド監視機能を導入する実証実験を行った。フリックケアは、中小企業向けに生産設備のICT導入や自動化ソリューションを開発する企業だ。工作機械の稼働状況を振動で監視し、データをクラウド経由でモニタリングできるサービスなどを提供している。
実証実験では、フリックケアがクラウド側にデータを保管するシステムを開発し、クラウド上でデータを正しく保存できることを確認した。今後は、ユーザー向けの管理画面の開発、データの収集や解析を進めることで、しきい値精度の向上を目指すという。
両者による今後の開発予定。しのはらプレスサービスでは紙などで記録されている過去の点検データをシステムに反映させ、フリックケアではクラウド上のデータ収集と、Web上でのユーザー管理画面の開発を進める(クリックで拡大) 出典:しのはらプレスサービス、フリックケア
しのはらプレスサービス 社長の篠原正幸氏は「主従関係ではなく、サービスを持ち寄ることで、互いに自立するためのヒントを得られるのがオープンイノベーションのメリット。スタートアップとの協業プロセスを経て、サービスを発展させることが可能になった」と今回のプロジェクトへの感想を述べる。
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