国内製造業のIoT活用、大手に易く中小に難し?:製造業IoT(2/2 ページ)
日本能率協会コンサルティングが「第4回ものづくりIoT実態調査」の調査結果を報告した。これまでの調査結果との比較から、IoTで現場の課題解決に取り組んでいる、あるいは取り組もうとしている企業は着実に増えているものの、企業規模別や業界別で差が広がりつつあるという。
IoTへの取り組み状況、中小企業は中堅企業に逆転される
IoTの取り組み状況の3年比較では、企業規模別で大きな差が生まれていることも分かってきた。「I.課題解決」に取り組み中の企業の比率を見ると、売上高1000億円以上の大手企業で2016年に55%、2017年に67%、2018年に80%と進展し、売上高100億〜1000億円の中堅企業も2016年の27%から、2017年に41%、2018年に55%と伸びている。しかし、売上高100億未満の中小企業は、2016年が33%と中堅企業を上回っていたものの、2017年は33%のまま、2018年は28%に低下している。「やはり規模の力の差は大きいのかもしれない」(松本氏)という。
規模の違いで取り組みの差が生まれていることは「IoT推進のボトルネック」という設問に対する回答にも示されている。売上高100億円未満の中小企業は、大企業や中堅企業と比べて「推進組織がない」「企画検討の手段が分からない」「開発投資の余力」という回答が占める割合が大きかった。松本氏は「PoC(概念実証)なら100万円以下の投資でやれるが、次の段階に進もうとすると1000万円を超えるという話もある。そこをレトロフィットやポン付け(装置や機械への後付け)のソリューションで対応するなどの工夫も必要だろう」と説明する。
業界別で見ても「I.課題解決」への取り組みに差が見られた。取り組み率(既に実行中、現在計画中の比率)について3年間全体の動きを見ると、電気機器、輸送用機器、機械、ゴム・窯業が高い一方で、食料品、鉄鋼/非鉄金属/金属製品、化学といったプロセス産業は低い。ただし、食料品と鉄鋼/非鉄金属/金属製品は2018年に急激に伸びており、プロセス産業のIoTに対する注力ぶりがうかがえる。ただし化学は伸びが鈍く「防爆などの規制が多く通信機器を現場に持ち込みづらいことが課題になっているかもしれない」(松本氏)とした。
また、IoT関連の注目技術では「各種センシング技術」「ロボット活用」「3Dプリンティング」などが、2017年から引き続き導入や導入検討の比率が高い状況にある。2018年の調査結果で顕著な伸びを示したのがAI(人工知能)で、2017年の33%から2018年は62%とほぼ倍増している。一方、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)への注目の度合いは低調な状態にある。
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