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ドローンが300℃の火の中を飛ぶ、チタンとマグネシウム、ジルコニア塗装でドローン

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とドローンメーカーのエンルートは2019年3月6日、東京都内で記者会見を開き、火災現場への進入と火元での近距離空撮が可能な耐火型ドローンを開発したと発表した。2019年10月から受注を開始し、2020年春から納入する。価格は現時点では非公表。目標販売台数は500台。

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写真左からエンルート 代表取締役社長の瀧川正靖氏とNEDO ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏(クリックして拡大)

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とドローンメーカーのエンルートは2019年3月6日、東京都内で記者会見を開き、火災現場への進入と火元での近距離空撮が可能な耐火型ドローンを開発したと発表した。2019年10月から受注を開始し、2020年春から納入する。価格は現時点では非公表。目標販売台数は500台。

 エンルートの従来製品は耐火性能が45℃以下となっていたが、開発品はISOで定められた消防士の防火服よりも高い耐火基準である300℃まで対応する。300℃の環境下で1分間の連続運用が可能で、火炎に触れた状態でも撮影できる。ボディーだけでなく、カメラやローターも耐火性能を向上させている。2019年4月から消防署などにサンプルを提供し、モニター調査を進める。

 耐火型ドローンは、ドローンの社会実装に向けたNEDOのプロジェクト「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESS)」の一環で開発した。同プロジェクトは2016〜2021年度の期間で、ロボットやドローンの機体を対象とした性能評価基準などの開発、無人航空機の運航管理システムや衝突回避技術の開発、ロボットやドローンに関する国際標準化の推進に取り組んでいる。この中で、2017年に火災現場などの特殊環境下で連続稼働が可能な期待を開発する目標を立てた。

 具体的には、熱風にさらされても稼働できる耐火性能を持つこと、映像で火災現場の情報を迅速に確認できること、自動制御で熱源との距離を保つことなどを満たし、人が近づけない災害現場の情報収集や捜索、救助支援を迅速に実施できるようにすることを目指す。

ドローンが火元に近づくには

 ドローンは、上空から火元や消防車の進入ルートを確認したり、車両が侵入しにくい場所で火災に巻き込まれた人の捜索を行う場面で、需要が高まっている。しかし、耐火性能のない従来のドローンでは火元に近づくことができず50m以上離れて撮影するため、ブレやボケ、煙などで鮮明な映像を撮影するのが難しかった。

 今回発表した耐火型ドローンは火元の5〜20m上空で撮影可能で、付属品の赤外線カメラを組み合わせることで火元の詳細な様子を撮影可能だ。また、火炎に接触した状態でも1分間連続で稼働できる他、機体の温度や450℃以上の外部の熱源を検知すると自動制御で熱源から離れながら飛行する。

 発表した耐火型ドローンは、エンルートが測量、観測用に展開する「QC730」の姉妹機種という扱いになる。しかし、耐火性能を持たせるため、ボディーやプロペラなどは別の素材を使用している。ボディーとフレームはマグネシウム、プロペラにはチタンを採用して軽量化するとともに、表面は2000℃まで耐熱性を持つジルコニアで塗装した。カメラのレンズは石英のカバーで熱から保護し、バッテリーやモーターにも耐火カバーを設けた。バッテリー自体は従来機種と同じものを使用している。

開発した耐火型ドローン(左)。モーター部分には耐火対策のカバーが採用されている(右)(クリックして拡大)

 開発初期は従来製品と同じカーボン製の機体に耐熱性の塗料を塗り重ねて検証したが、十分な耐火性能を持たせるのが難しかった。ボディーやプロペラ、塗料の材料選定に苦労したという。また、材料が確定した後も、ジルコニア塗装を定着させる難しさなどの課題があった。量産に向けては、ジルコニア塗装を定着しやすくするための表面処理や、ボディー、フレームやプロペラをプレス加工するための金型で対応する。

 耐火型ドローンのローター数や直径、軸間、高さ、最大離陸重量はQC730と同じ。また、耐風性能も両機種とも秒速10mで、火災現場で起きる爆発に対応した飛行については現在研究中だという。通信は、従来機種は2.4GHz帯を使用しているが、耐火型ドローンは、事前の使用申請が不要で2.4GHz帯よりも通信が途絶えにくい920MHz帯を使用する。価格は従来機種であるQC730が200万円前後のため、「ここにどれだけ近づけられるか」(エンルート)と考えているという。

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