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障害は飛行機のブラスト――自動運転が日本の航空運輸を支えるか自動運転技術(1/2 ページ)

羽田空港の制限区域内で自動運転の実証実験が始まった。SBドライブや先進モビリティ、ANA(全日本空輸)など6社が実験に参画し、2020年に開催される東京オリンピック期間前後で空港内と周辺地区における乗客輸送の自動化を目指す。

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 羽田空港の制限区域内で自動運転の実証実験が始まった。SBドライブや先進モビリティ、ANA(全日本空輸)など6社が実験に参画し、2020年に開催される東京オリンピック期間前後で空港内と周辺地区における乗客輸送の自動化を目指す。


空港内制限区域を走行する自動運転車両(クリックで拡大)

 今回の実証実験は2019年1月15日から同月25日までの平日に約2週間実施され、2019年1月22日に報道陣へ試験の様子を公開した。レベル3の自動運転技術を実証する場は多く存在するが、本実証では人の立ち入りが厳しく制限される滑走路や誘導路、駐機場など空港の制限区域内で実施されることが特徴となる。

 実証実験では空港特有の要素である飛行機や特殊車両の往来と自動運転車両の受容性、空港地上支援業務との接続性、空港施設内で自動運転車両が正しく動作するかといった適合性などの項目を確認する。

ブラストの安全確認はやはり“人”が必要

 実証実験で自動運転車両が走行するルートは、羽田空港第2ターミナルから2018年12月10日から供用開始したサテライトターミナルまでの片道600m。車両は日野自動車の小型バス「ポンチョ」をベースに先進モビリティが改造したもの。Velodyne(ヴェロダイン)製のレーザーLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)や単眼カメラ、ミリ波レーダーといったセンサー系とSBドライブが開発する通信システム、ディープラーニング処理用としてNVIDIAのDRIVE PX2を搭載する。本実験では最高時速20kmで自動運転を行い、実験関係者のみが乗車する。

左:センサーで得られた情報を表示するディスプレイが車内に取り付けられている 右:羽田空港制限区域内の自動運転ルート(クリックで拡大)

 自動運転ルートは空港で地上業務に就くトーイングトラクターやタグ車、乗務員を運ぶバス等も利用しており、交通量は多い。また、ルートの一部では飛行機のブラスト(ジェットエンジンの高温高圧排気ガス)を避けるために一時停止と安全確認を行う場所、またターミナルビルの下を通過するためにGPS信号の受信が妨げられる場所がある。

左:ブラストを避けるため、規定により航空機後部から100m以上離隔しなければならない 右:一時停止線で停車する車両(クリックで拡大)

 そこで、今回の実証実験では自動運転車両の安全を確保するため、遠隔運行監視システムと磁気マーカーによる自己位置推定を導入した。バスの運転状況と乗客状況はSBドライブが開発する遠隔運航監視システム「Dispatcher」で一元管理される。車両がブラスト停止線に近づき自動で一時停止した後は、遠隔の監視者がバスまたはターミナルの監視カメラ画像からブラストの危険発生を判断する。その後、ブラストの危険がない、もしくはブラストの発生が収まったと判断された場合は監視者が運転再開ボタンを押し、自動運転車両に発車指示を出す。


遠隔運航監視システム「Dispatcher」を操作する監視者(クリックで拡大)

 ブラスト検知の自動化について、SBドライブ担当者は「将来的にセンサーや画像解析で検知できるかもしれないが100%の検知は難しい」との認識を示す。ブラストの発生は航空機と自車位置の関係や航空機の出発準備状況、エンジン音などで予測できるが、ブラスト検知自動化を完全に達成するためには今しばらくの技術開発が必要となりそうだ。

 また、GPSによる測位では衛星電波の補正情報を利用するRTK-GPS( Real Time Kinematic-GPS)を採用する。一方で、GPS信号が遮蔽(しゃへい)される場所では著しく測位精度が低下するため、このような場所での自己位置推定には走行ルートに沿って路面に埋め込まれた磁気マーカーを用いる。

 磁気センサーシステムは愛知製鋼が開発、磁気マーカーの路面埋め込みはNIPPOが担当する。マーカーは通常2m間隔で埋め込まれカーブが厳しいところでは1m間隔となるが、夜間作業3日間で施工が完了したという。また、NECが開発した磁気マーカーにはRFIDタグが付属しており、位置情報や経路情報の送信も可能となった。


RFID付き磁気マーカーの概要(クリックで拡大)

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