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AIによるコンピュテーショナルデザインはどこまで進むのかMONOist 2019年展望(1/2 ページ)

メカ設計の現場においてもAIや自動化といったキーワードを頻繁に聞くようになってきた。メカ設計ツールのAIや自動化関連のワードとしては「トポロジー最適化」「ジェネレーティブデザイン」「パラメータ最適化」などが挙げられる。それらを総称して、あるいは一部を指し「コンピュテーショナルデザイン」と呼ばれることもある。

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 AI(人工知能)は今やバズワードでありだんだん身近なものになってきている。特にこの数年はAIの音声認識や音声アシスタントなどの技術の進化が目覚ましい。また高齢化や人材不足の中、AIを活用した自動化にも注目が集まる。

 メカ設計の現場においてもAIや自動化といったキーワードを頻繁に聞くようになってきた。メカ設計ツールのAIや自動化関連のワードとしては「トポロジー最適化」「ジェネレーティブデザイン」「パラメータ最適化」などが挙げられる。それらを総称して、あるいは一部を指し「コンピュテーショナルデザイン」と呼ばれることもある。

 コンピュテーショナルデザインの技術は航空宇宙や自動車、建築設計における研究開発の最先端で活用されている。しかし実際は建築・製造業において広く普及しているわけではなく、最先端のごく一部の企業や組織でしか活用されていないという現状だった。また自動化している対象は、形状そのもの、概念設計、建築物全体などさまざまである。

 ともかく一部の企業だけの世界だったコンピュテーショナルデザインであったが、この2、3年、その状況に少しずつだが変化がみられており、ミッドレンジのメカCAD関連の情報としてよく聞こえてくるようになってきた。

トポロジー最適化の技術的立ち位置の変化

 トポロジー最適化はユーザーが指定した3Dデータに対し設計空間や設計条件を指定することで、なるべく強度を損なわずに肉抜き形状を自動生成する技術だ。また人の頭の中にある知識では到底導き出せないだろう自由な形状が生成されることが特長だ。

 航空宇宙や自動車関連では部品の軽量化を図ることで性能向上を狙うが、人の命を預かるこの業界ではそれにより強度が落ちてしまうことがあっては問題だ。航空機や自動車の性能向上は著しく、人の思考でやれるところは既にやりつくしている部分もあった。強度と重量というトレードオフのギリギリに取り組まざるを得ない現場で活用され、これまで成果を出してきた。

 トポロジー最適化は何年も前から存在する技術であるが、過去はメカCADの機能としてよりは、構造解析関連のツールとして提供されてきた。そういった背景から、メカCADユーザーの多くになじみがあった機能なのか、と言えばそういうわけでもなかった。使われ方としては「構造解析の参考結果」としてメカ設計者側に提示されるといったところだった。

 ところが、2016〜2018年の間で100万〜数百万円前後のミッドレンジ帯3D CADの機能として提供される動きが見られた。2013年頃から起こった3Dプリンタブームの数年後くらいのタイミングだ。ブームが落ち着き、オフィスユーズの3Dプリンタが設計現場で浸透し、材料や手法、価格帯が多様化してきたころだ。CADベンダー各社が製品発表などでよくうたっているのは、従来のような設計案提示の他、3Dプリンタ(積層造形)での活用である。金属3Dプリンタで直接製造するといったコンセプトもよく語られるようになった(関連記事:金属3Dプリンタ活用3つのハードルと日本のモノづくりの今後)。

 しかしメカCADユーザーからすると、トポロジー最適化で生成される形状は結局、ポリゴンであるということが、いまいち引っかかるのだ。その声を受けて、CADで編集できるジオメトリで生成する技術が登場してきている。現状、市場にあるCADのうち、対応できているのは一部であるため、2019年以降も進化や広がりに期待したいところだ。


構造最適設計ソフトウェア「OPTISHAPE-TS」(くいんと)によるトポロジー最適化

ジェネレーティブデザインとは何か

 トポロジー最適化とジェネレーティブデザインは明確に定義を分けて説明されないことがある。トポロジー最適化もジェネレーティブデザインの一種であるという解釈も確かにでき、そのように説明される場面もある。

 最近のMONOistの記事ではベンダー関係者や識者の意見に基づき、以下のように定義をしている。

  • トポロジー最適化:基になる3D形状から肉を削ぐ形で、ユーザーが指定した設計空間や設計条件に基づいて、強度と軽量化を両立しながら自動で形状生成する技術
  • ジェネレーティブデザイン:基になる3D形状は不要。ユーザーが指定した設計空間や設計条件に基づいて形状を一から自動生成する技術。

 ただし、あくまで現時点での技術における定義であり、今後は両社の間にグレーゾーンができてくる可能性もある。また、ジェネレーティブデザインはトポロジー最適化よりも後発であり、さらに多岐にわたるパラメータが設定できる。複数の形状案を一気に生成することも特長だ。トポロジー最適化よりもさらに「自動設計」のニュアンスが強くなる。

 黎明期の技術ではあるものの、低価格〜ミッドレンジ帯のメカCADに実装される動きが少しみられている。さらに流体解析のパラメータなど、これまでのトポロジー最適化ではあり得なかったような条件まで入れられる可能性がある。


ジェネレーティブデザインのイメージ 出典:オートデスク

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