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2019年も検査不正は続くのか――モノづくりのプライドを調査報告書から学べMONOist 2019年展望(3/4 ページ)

2018年に不適切検査を公表した企業は原因がどこにあると考え、どのようにして再発を防止するのか。その答えは各社の調査報告書でたどることができる。本稿では、不正を犯す現場がどのような状況にあるのか、そして不正のない現場で今後不正を出さないためにできることを検討する。

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力のない品質保証部門が不正を生む温床となる

 3点目の「品質保証体制の整備が不適切」に関しては、組織体制の不備や管理基準の欠如、人員と設備の不足が指摘されている。特に、品質保証部門の独立性が不十分、検査員の過大な業務量と固定化した人事体制、不適切行為の余地がある検査設備に言及する現場の声や事例を紹介する。

品質保証部門から改善の指摘を複数回行ったものの、販売部門がこれに応じず、以後の指摘を止めてしまったケースや、品質保証部門の意向が尊重されず、販売部門が自ら試験成績表を発行するに至ったケースも存在――出典:宇部興産調査報告書 120ページ

本調査チームが行ったヒアリングにおいて、不適切行為について、「入社以来、周りもそうやっているのでそういうものだと思っていた」、「班長から言われることは、やらなければならないという認識で作業を行っていた」、「書換えの指示についても、作業の一つとして教えられているという感覚であり、特にそれがおかしいとは思わなかった」等の供述が見受けられた――出典:SUBARU調査報告書 120ページ

例えば山崎事業所では、不適切行為が行われていた約20年間にわたり、特定の製品の検査を1名の検査員が担当している――出典:日立化成調査報告書 429ページ

手書きで記入された検査結果をPC端末に入力して検査成績書を作成するというフローが採用されている。(中略)検査結果を検査成績書に入力する際に、実際の検査結果と異なる数値に書き換えることが可能であり、このことが本件不適切行為の動機を有する圧延用ロールの生産現場の従業員による検査結果の改ざんを助長した――出典:クボタ調査報告書 30ページ

 検査担当者や品質保証部門は顧客と取り決めた品質を守る最後のとりでとしての役目を負っている。また、品質不良が発生した場合には開発部門や製造部門とともに品質を作りこむカイゼンを主導する役割も求められるが、上述のような現場ではこれら役割を十分に発揮することはできない。

 また、不適切検査問題が大きな社会問題となった一因として、検査結果の事後検証を可能とするプロセスが機能不全であったこともあるだろう。自動車の完成検査問題ではリコールが再々に渡り行われた他、免震・制振用オイルダンパー問題では適合確認が遅々として進んでいない。


2018年10月22日に記者会見を行ったKYB専務の斎藤圭介氏(右)とカヤバシステムマシナリー前社長の広門茂喜氏

 SUBARU調査報告書では、2017年12月以前の燃費・排出ガスの測定システムについて「検証しようとすれば、人の目で完品票と一つ一つ対照するほかなく、検査結果の事後検証には多大な労力を要する状況にあった」とし、「不適切行為の抑止及び早期発見といった観点から事後的に測定データを検証する仕組みを構築するという発想が乏しい」と指摘している。

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