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IT業界の成功事例は製造業にとっては失敗事例? ヤマ発が語るデジタル変革の本質MONOist IoT Forum 東京2018(中編)(1/2 ページ)

MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2018年12月18日、東京都内でセミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。中編ではヤマハ発動機 フェローの平野浩介氏による特別講演「典型的な日本の製造業でデジタルトランスフォーメーションを推進するには?」の内容を紹介する。

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≫MONOist IoT Forumの過去の記事

 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2018年12月18日、東京都内でセミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。前編で東芝メモリ デジタルプロセスイノベーションセンター 副センター長の伊藤剛氏の基調講演「メモリ製造業におけるAI活用『AI×メモリ!?』」の内容を紹介したが、中編では、ヤマハ発動機 フェローの平野浩介氏による特別講演「典型的な日本の製造業でデジタルトランスフォーメーションを推進するには?」の内容について紹介する。

ヤマハ発動機のデジタル変革への取り組み

 特別講演「典型的な日本の製造業でデジタルトランスフォーメーションを推進するには?」で登壇したヤマハ発動機の平野氏は、インテルから2017年4月にヤマハ発動機に移り、デジタル変革を主導している※)

※)関連記事:ヤマハ発動機唯一のフェローはインテル出身、2030年に向けデジタル改革に挑む

 平野氏は「今まではITを売る立場としてデジタル変革を訴えてきたが、使う側の立場でデジタル変革に取り組みたくなった。ITの進化は目覚ましく時価総額でも世界の上位はほとんどがIT企業だ。製造業としてどのように変革できるかが大事で、今の技術変革を製造業にどう取り込むかに挑戦している。ただ、ヤマハ発動機に入社した理由の大きな理由はバイクが好きだったからだ」と語る。

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「YAMAHA Fellow」の文字が入ったジャケットを着てヤマハ発動機のレーシングモデルの二輪車を駆る平野氏の姿

 ユーザー側の立場でデジタル変革を進めるに当たり、IT戦略とビジネス成長の2つをどう組み合わせていくのかに時間を使ったという。その中で重要なのが「目的」と「手段」の2つの事象を切り分けて考えることだと平野氏は主張する。

 「IT企業はデジタル変革を訴えているが、そのほとんどが手段を構築する話である。ただそれは手段であり、ユーザー側の立場で考えると本質ではない。いかにビジネスを成長させるかという点が最も重要で、最新システムを導入したからといってビジネス成長がなければ意味がない」と平野氏は考え方の違いについて述べる。

 その例の1つとして、ハーレーダビッドソン(Harley-Davidson)の例を挙げた。「ハーレーダビッドソンは最新のITシステムを導入し、デジタル変革によるマスカスタマイゼーションを実現した成功事例としてIT業界では挙げられている。リードタイムも従来は20日程度かかっていたのが数時間に短縮でき、数百億のコスト削減を実現したということだ。ただ、ヤマハ発動機の立場でバイクの競合企業として見た場合、ハーレーダビッドソンの業績は、決して良いとはいえない。本質的な社業が伸びていない。そういう意味ではビジネス面での『目的』に対して成功ではなく、立場による見方の違いがある」と語っている。

本質となるビジネス価値

 こうした中で平野氏はどのようにデジタル変革に取り組んだのだろうか。平野氏は「ビジネス価値が本質だ。そのためまずは経営トップと十分な時間を使ってディスカッションを行い、長期ビジョンをどう描くのかを共有することが大事だ。ビジネスをどう伸ばすかということとデジタル技術をどう組み合わせるのかを考える必要がある。目的達成のための手段としてのITをどう活用するのかという視点だ」と語る。

 これらを共有した上で「ビジネス戦略に対するデジタル技術の持つ価値を精査しそのインパクトを共有する。現在の状況を考えるとデジタル技術なしには新たな価値を実現することは難しい。ただ一方で、今までのITは業務のバックアップシステムという位置付けだったが、現在のデジタル変革で使われるITは新たなビジネス価値を生み出すものであるため、投資に対するリターンをどう作るかを考える必要がある。これらの下準備を半年間かけて行った」と平野氏は取り組みについて述べている。

 これらの共通理解を作り上げた上で、ヤマハ発動機のビジネスや社内での取り組みをデジタル技術の視点から精査していったという。コネクテッドビークルやスマートファクトリーなどへの取り組みである。ただ「これらを実現するためにはまずは全ての情報をリアルタイムで一元的に管理できるようにする必要がある。そのため、ERP(Enterprise Resources Planning)システムに手を入れた。従来はグローバルの各地域が独自にシステムを構築するなど部分最適となっており、これらのシステム間をつなぐツールはあってもExcelのバケツリレーも必要になっていた」(平野氏)とする。

 そこでグローバルでの連結データベースを作り統合データベースを構築する方向性を打ち出した。平野氏は「これを1階とし、その上の2階部分にビジネス価値につながるデジタル系のデータベースを作る。1度データが集まれば目的に合わせたアプリケーションを使いながら、必要なデータを基に経営陣に話をすることができ、ビジネス価値を示すことができる」と語る。

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