生産性3倍、リードタイムは6分の1、安川電機の新スマート工場が示すもの:スマート工場最前線(3/4 ページ)
安川電機は2018年7月に稼働開始したスマート工場「安川ソリューションファクトリ」を報道陣に公開した。生産スピード3倍、生産リードタイム6分の1、生産性3倍を実現したという同工場の取り組みを紹介する。
工程絞り込みで実現した産業用ロボットによる自動化
「変種変量生産への対応」として、力を発揮しているのが産業用ロボットである。モーターの製造ラインでは基本的には、人の作業は、部品投入と検査、メンテナンスなどに限られ、組み立てなどの作業は産業用ロボットと専用装置で行っている。しかし、モーターだけで500種類もの製品が流れてくる中で、そのまま自動化を進めた場合、ロボットといえども、ティーチングやハンドの変更などが必要になり、段取り替えなどが必要になり、結果として生産性が落ちることが起こり得る。
そこで安川電機では、まず各ロボットが担う作業を単作業へと限定し、その中での作業パターンを抽出。作業に必要なハンドや冶具を用意し、作業と合わせてハンドを付け替えたり、冶具を置く動作を加えたりしてティーチングを行い、自動化を実現した。「生産ラインのスペースとしては従来工場よりも増えたが、生産に必要な人員は3分の1に、生産スピードも3倍にできたため、結果的に生産効率は上がっている」(担当者)としている。
「止めない工場」としての取り組み
一方でラインを止めないという意味で、工夫として取り入れたのが、工程間に人が関与できるブースを用意していることである。産業用ロボットも予防保全ができるとはいえ、壊れないことはあり得ない。そういう時でもラインを止めずにすむように、壊れたロボットの作業は止めたまま飛ばして、人用ブースで作業員が代替して作業を行えるようにしているという。「産業用ロボットは従来3台を組み合わせて幾つかの作業を行う形にしてきたが、単作業にしたのは『止めないライン』を実現する意図もある」(担当者)としている。
産業用ロボットでのモーター組み立てライン。透明のロボット作業工程の間にある白いブースが人の入れるスペース。通常は部品投入などを行っているが、非常時にはここで人がロボットに代わって作業できるようにしている(クリックで拡大)
「止めない工場」としては、まずAI分析によるロボット減速機の故障予知を既に行っている。これは現場データの収集から分析まで一括で行えるソフトウェアツール「YASKAWA Cockpit」を活用し、ロボットの稼働データを収集しAI分析を行うことで実現している。「故障予想日」を示し、次の生産計画中に壊れる可能性がある減速機については事前に計画保全を行うような運用が可能だとしている。
AIの活用で人のカンコツを自動化
その他、新たにAIを活用して自動化を進めている工程が、サーボモーターの個体差調整の自動化である。サーボモーターは個体によって位置ずれがあるのが当たり前で、それを調整で修正する必要がある。このモーターを回したときの反応を学習し、正常な位置を調整する。従来は人のカンやコツで行っていたが、AIを活用することで、約3回押すだけで個体差調整が行えるようになったという。その他では、現在学習中だとしているが、モーターの異音検査を自動化するためにAI活用を進めているという。
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