パーキンソン病治療の治験、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の移植で1症例目:医療技術ニュース
京都大学医学部附属病院は、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験を行った。第1症例目の細胞移植で、約240万個のドパミン神経前駆細胞を脳の左側被殻に移植した。
京都大学医学部附属病院は2018年11月9日、「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」における第1症例目の被験者に対し、ヒトiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植を行ったと発表した。手術は同病院内で、同年10月に脳神経外科医師の菊池隆幸氏らによって行われた。
使用するiPS細胞は、京都大学iPS細胞研究所で、約2カ月かけて再生医療用iPS細胞ストックをドパミン神経前駆細胞に分化させて作製された。具体的にはiPS細胞に複数の試薬を加えてドパミン神経前駆細胞を誘導し、未分化な細胞やドパミン神経以外の細胞をセルソーティングという手法で除去。最後に直径約300〜400μmの細胞塊とし、その細胞塊を移植した。
移植術は、定位脳手術という方法で行われた。最初に被験者の頭部に目盛りが刻まれた機器を取り付け、頭部CTを撮影。定位脳手術用のプランニングソフトを用いて、あらかじめ術前のMRIで検討しておいた標的と刺入経路を実行した。
頭蓋骨には直径12mm程の穴を開け、ソフトで算出された座標と方向に基づいて細胞注入用の針を進める。目標点に細胞を注入する細胞は刺入経路ごとに準備され、針の穿刺の都度、必要分の細胞を遠心分離機にかけて上澄みを除去し、専用の注射器に充填。脳の左側被殻に約240万個のドパミン神経前駆細胞を、3本の刺入経路を用い、1本の刺入経路あたり2mm間隔で4カ所、合計12カ所に注入した。
手術時間は3時間1分で、被験者の術後の経過は良好だという。
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