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製造業の「モノ」から「コト」化を支援、ビジネスモデル構築に“寄り添う”意味製造業がサービス業になる日

IoTやAIの活用が広がる中、製造業でも「モノ」から「コト」へのビジネスモデル変革が進みつつある。しかし、日本の製造業は、これらの新たなビジネスモデル構築に難しさを感じる企業が多いのが現実である。この製造業のサービス化の動きについて、しっかりと寄り添い、成果を生み出しつつあるのがJSOLである。

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サービス(コト)を主体としたビジネスモデルへ

 製造業のビジネスモデルが大きく変化を遂げようとしている。製造業といえば、従来は「モノ」の提供を通じて価値を実現するというのがビジネスモデル全てだった。しかし、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの先進技術の発展により、価値をモノから切り離して提供できるようになった。これにより、製造業が「モノ」そのものを提供するのではなく、「コト」としてサービスを提供する動きに変わり始めているのだ。

 ただ、これらの動きは日本の製造業が比較的苦手としている領域である。サービスビジネス化を進めるということは、売れば終わりのビジネスモデルとは異なってくる。顧客との関係性が常に継続されるものとなり、コスト構成や人員配置、必要な技術なども全て変わってくるからである。そもそもこうした新たな構造の中で、顧客にとっての価値をどう描き、コストをどう見るかというのは非常に難しいことで、多くの製造業にとって1社でこれらの変革を実現するのは難しいのが現実である。

 こうした製造業の「モノ」から「コト」への変革に寄り添い、新たなビジネスモデル構築の支援を進めているのが、ICTサービスコーディネーターのJSOLである。

 JSOLは、SMBCグループの日本総合研究所から2006年に会社を分割する形で設立された独立系のシステムイングレーター(SIer)である。製造業や流通サービス業、金融公共分野を中心とする企業に向けて、ICTコンサルティングからシステム構築、運用に至る一貫したサービスを提供し、実績を積み重ねてきた。2009年1月にNTTデータと資本業務提携を結び、以降さらにそのサービスの幅を大きく広げている。

 この中で特にここ最近、注力しているのがIoTである。2018年11月からは、製造業がIoTを通じて新たなサービスビジネスを展開するのを支援する「JSOL IoT Digital Service」の提供を開始した。これは、IoTプラットフォームをサブスクリプション(従量課金)型のサービスとして提供し、IoTのPoC(概念実証)に費やすコストを抑えつつ、実用システムへのスムーズな展開を実現するものだ。

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「JSOL IoT Digital Service」の概要図(クリックで拡大)出典:JSOL

 「IoT入門」をうたったスターターパックのようなソリューションは、既に多くのベンダーから提供されている。製造現場のさまざまな設備や機器から簡単かつ安価な手段でセンサーデータの収集を可能とするもので、数多くの先行ベンダーが、そこから得たセンサーデータをもとに、故障診断や歩留まり向上を実現するIoTシステムを提案し、トライアルを開始している。

 このような中でJSOLの差別化のポイントにはどういう点があるのだろうか。JSOL 基盤サービスビジネス事業部 マネジャーの矢野憲作氏は「新たなビジネスモデルの具現化支援ができる点が特徴だと考えています」と述べる。

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JSOL 基盤サービスビジネス事業部 マネジャー 矢野憲作氏

 「既に各社が製品やサービスを提供しているレッドオーシャン(激しい競争が繰り広げられている領域)に参入しても厳しい競争が待っているだけです。JSOL独自の利点を考えた時に、多くの顧客基盤を持ち、顧客の要望に寄り添ってきた点があると考えました。製造業にとって、良い製品(モノ)さえ作っていれば売れるという時代は終わりつつあり、先見性をもった企業はサービス(コト)を主体としたビジネスモデルへの転換を模索しています。JSOL IoT Digital Serviceはそんな顧客の課題に応えていくものだと考えます」と矢野氏は考えを述べている。

 具体的に「製造業のサービス化」を実現するには、顧客に対する価値の本質を理解し、それをサービスとして提供する仕組みを描き、そのために必要な体制やシステムを計画し、組織変革やシステム改革などを進めていくというような取り組みが必要となる。こうした総合的な支援が必要になるのだ。この中で、JSOL 基盤サービスビジネス事業部 イノベーション推進チームリーダーの砂子一徳氏は、共創での強みを述べる。

 「共創のプロセスでこそ、JSOLが長年培ってきたコンサルティングやSIの知見が生かされるのです。上流の経営やビジネス視点からヒアリングした要望をもとに、顧客の潜在的な課題を明確化し、変革を具現化する力は、シンクタンク発のSIerである強みです。既存のIoTプラットフォームを顧客のニーズに適用できるか否かで判断するのではなく、顧客の課題解決に共に取り組む中から実現した機能を汎用化し、逆にIoTプラットフォームに取り込んでいくというアプローチが取れるのは独自の強みだと考えます」と砂子氏は述べている。

JSOL IoT Digital Serviceの3つの特長

 具体的にJSOL IoT Digital Serviceはどんな価値をユーザー企業に提供するのだろうか。それを読み解く鍵は、次の3つのポイントにある。

 第1は、コンサルティングサービスだ。JSOLは得意とするデザインシンキング技法などを用いて、ユーザー企業の課題と向かうべき方向性を明らかにし、適用技術の検討、利用デバイスの選定、収益モデルを含めたビジネスモデルの検討を支援する。

 第2は、IoTプラットフォームサービスの柔軟性である。さまざまな事象や現象の可視化など、IoTシステムのPoC環境を非常に安価なコストで提供するとともに、企業が実現したいことをヒアリングしたうえで、設定済みのプラットフォームを提供。さらにサブスクリプションモデルを生かした運用コストの低減に貢献し、今後の事業拡大に即した柔軟なリソースや機能の拡大にも対応する。なお、IoTに必要なエッジ部分のデバイスやセンサーについては基本的に既に企業が導入済みのものを利用するが、要望次第ではJSOLが提案、調達することも可能だ。

 第3が、アドバンスドサービスによる持続的な機能強化の支援だ。SAP S/4HANAをはじめとする基幹システムの豊富な構築実績を有するJSOLの技術陣が、IoTプラットフォームと基幹システムの有機的なデータ連携を支援する。また、AI(機械学習、深層学習)や各種コグニティブサービス(画像・音声認識)を組み合わせた、より高度なIoTプラットフォーム構築を支援する。

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JSOL 基盤サービスビジネス事業部 イノベーション推進チームリーダー 砂子一徳氏

 そして、上記のような特長をもったIoTプラットフォームを実現するために、JSOLが全面的に採用したのがMicrosoft Azureである。「JSOLとしては、あくまでも中立的な立場からクラウドを選定しますが、エンタープライズ分野、なかでも製造業における実績や信頼の高さを考慮すると、やはり顧客に最も受け入れていただきやすいのはMicrosoft Azureです」と、矢野氏はその理由を説明する。

 また、サービス開発の観点からも、JSOLの描いたIoTのコンセプトを最短距離で体現できるのがMicrosoft Azureだった。「JSOLは数年前からクラウド関連のビジネスに注力し、その基盤上でのシステム構築も運用も熟知していますが、一方でまだ経験が浅いと感じているのがエッジ領域の多様なデバイスと連携する技術です。その点、Microsoft Azureでは、インテリジェントエッジを実現するAzure IoT Edgeやセキュアなマイクロコントローラー(MCU)デバイスを提供するためのテクノロジーであるAzure Sphereなどの機能がすぐに利用可能な形で用意されています。エッジからクラウドまでシームレスなプラットフォームが用意されているからこそ、われわれは苦労することなく顧客のサービス開発に専念することができます」と、砂子氏はその価値を強調する。

日本アンテナとの共創で構築したクラウド型無線水位計システム

 こうして開発されたJSOL IoT Digital Serviceだが、既にいくつかの先行導入事例がある。その1つが、日本アンテナが新ビジネスとしての展開を目指している「クラウド型無線水位計」におけるIoT遠隔監視サービスだ。

 日本アンテナは自社開発した親子方式による多面接続が可能なクラウド型無線水位計で、国土交通省の推進する「革新的河川管理プロジェクト実証実験」に参画したのである。同省では今後、全国約5000河川の5800カ所に危機管理型水位計を設置する予定としている。

 危機管理型水位計とは、国土強靭化を進める国土交通省が全国の国家管理河川への設置を計画しているもので、「洪水時の水位観測に特化した低コストの水位計を開発することで、これまで水位計の無かった河川や地先レベルでのきめ細かい水位把握が必要な河川への水位計の普及を促進し、水位観測網の充実を図る」という目標が掲げられており、日本アンテナも案件受託を目指している。日本アンテナはセンシング技術や無線通信技術は保有しているものの、ITやIoTに関する技術は不十分だった。そこで今回、このサービスの根幹を担うIoTプラットフォームとして、JSOL IoT Digital Serviceを採用した。

 「実証実験で構築したのは、河川に設置された危機管理型水位計(子機)とゲートウェイ(親機)の間を独自方式の920MHz無線モジュールで接続し、そのデータをMicrosoft Azureに集約するという仕組みです。今後はクラウド上に集まってくるデータを分析し、洪水の発生時に自治体の防災行政無線などと連携して注意を促します。企画段階から緊密な議論を重ねながらサービスモデルを作ってきました」と矢野氏は語る。

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河川増水をIoT水位計で監視するサービスの模型(クリックで拡大)出典:JSOL

 また、システム構築にあたっては、「ユーザーインタフェースを除き、Microsoft AzureのPaaSを組み合わせて必要な機能を実現する」という方針を徹底したという。

 「Microsoft Azureが他のクラウドサービスを圧倒しているのがPaaSの充実度です。このメリットを最大限に生かすことで、システム構築期間の短縮やコスト削減を図ることができます。また、Microsoft AzureのPaaSを利用すれば、OSのパッチ適用やアップデートなどが全てマイクロソフト側で行われるため、本番サービス開始後のメンテナンス作業を大幅に省力化できるのも重要なポイントです」と砂子氏は強調する。

 これらを生かし、今後日本アンテナでのサービス高度化を進めていく方針だとしている。

エコシステム型の協業体制を構築

 JSOL IoT Digital Serviceが提供するサービス機能には、「データグラフ化」「画面表示設定(グラフ表示のカスタマイズ)」「CSVエクスポート」「マスターメンテンス(メール通知のしきい値および有効/無効の設定)」「デバイス設定」「デバイス状況ダッシュボード」「地図表示」などの機能があるが、オプション機能ながら、注目を集めているのが「機械学習」機能である。

 JSOL IoT Digital Serviceには製造業の他、流通小売業など、既に多くの企業から引き合いが寄せられているが、その際に必ずといってよいほど問い合わせを受けるのが、この機械学習の機能なのだという。先述の危機管理型水位計サービスを例にとると、中小河川でしばしば起こる急激な水位上昇(氾濫)に対応するためには、定期的に推移を監視するだけでは不十分で、予測的なアラートの発信も不可欠となる。

 「このような新たなニーズに応えるためには、上流の降雨情報やダムの放流情報など広範なオープンデータを集め、AI的な手法で複合的に分析する必要が出てきます。その意味からも、Azure Machine LearningなどMicrosoft Azure上の機能を有効活用する必要があると考えています」と砂子氏は、今後の展開を見据えている。さらに、個別対応を重ねる中で新たに開発される機能や洗練化される機械学習の知見をIoTプラットフォームにフィードバックし業種特化型のサービスの提供も検討するという。

3年間で50社の採用が目標

 JSOLでは今後「日本アンテナ様をはじめ各種デバイスメーカーとの連携を強化し、エコシステム型の協業体制を構築していきます」(矢野氏)とし、今後3年間で50社のJSOL IoT Digital Serviceの採用を目指している。

 矢野氏は「製造業がサービスビジネス化を進める中で、それぞれの置かれる環境は千差万別です。その中で新たなビジネスの形を作っていかなければなりません。JSOLではもともとSIerとして、多くの製造業と付き合ってきました。そしてその強みと弱みを熟知しています。その豊富な経験を基に、今のビジネスに寄り添いながら、新たなビジネス創出に共に取り組んでいくことはわれわれにしかできない役割だと考えているのです」と語っている。

 製造業にとって「モノ」から「コト」へのビジネス変革は一種のパラダイムシフトでもあり、簡単には実現できない。そんな苦しみを理解し、寄り添いながら新たなビジネスのカタチを共に作り上げてくれる存在として、JSOLは最適なパートナーと成り得るのかもしれない。

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「ビジネス変革に寄り添えることが強み」と語る矢野氏(右)と砂子氏(左)(クリックで拡大)

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企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するためのIoTサービスとは?

イノベーション創出の準備作業として欠かせないPoC(概念実証)は、さまざまなテクノロジーの浸透によって可能になった。しかし、その中核をなす技術であるIoTには、まだまだハードルが高いと感じている企業も多いのではないだろうか。


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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年12月26日

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