5年で求人が3倍増、活況を呈する自動車業界の転職事情:モノづくり業界転職トレンド(2)(1/2 ページ)
日本の産業をけん引してきた自動車業界で、求人がここ5年で3倍になるなど大幅に増加している。その背景を転職コンサルタントに聞いた。
バブル期を除く有効求人倍率が過去最高を記録しているなか、製造業の中でも特に求人が増加しているのは、日本の産業をけん引し、世界的にも一定のイニシアティブを握っている自動車業界である。自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイックの社内データによれば、自動車業界の求人はここ5年で3倍になっているという。
求人の多い職種や、年齢層など、近年の自動車業界の求人事情について、クイック 人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏に聞いた。
キャリア採用の積極性が増している
リーマンショックを底に、日本の求人は全体として堅調に伸びている。とりわけ自動車業界では、ここ10年ほどで起こっている技術革新を背景に、それまで採用していた機械系の技術者から、電気やソフトウェア、制御、材料など、さまざまなバックグラウンドの人材を、しかも数多く採用したいという意向が強くなってきているようだ。関寺氏は「自動運転や先進安全運転技術が市場に投入され始めたころから、即戦力となるキャリアの採用に対する積極性が増してきたという印象を受ける」と話す。
中でも特に求人が多い職種は「大きくわけて3つある」と関寺氏はいう。1つは前述したように、先進安全運転や電気自動車など、今までの業界で必要だった技術とは異なる電気制御やIT、通信、ネットワークなどのスキルを持つエンジニアである。
2つ目は品質関連の職種。使われる技術が変われば、技術的なトラブルの種類も変化するし、情報がすぐに拡散する昨今、企業はトラブルをなくすだけでなく、未然に防ぐための品質管理体制も整えたいと考えているからだ。
3つ目は、機械系や生産系のエンジニアである。業界全体がまだまだ伸びていく中で、以前から必要であったこういった技術領域のエンジニアもまた不足している。
品質は今後重要なポジション
特に採用に苦戦しているのは品質関連の職種である。従来の品質管理部門の業務は、基準やルールを整備して、教育や指導をすることが中心で、必要な人材も物事を整理してとりまとめる力や指導力が重視されたが、現在は問題が複雑化しており技術を深く分かっている人でなければ対応が難しくなっている。しかし品質管理部門というと、不具合やクレームへの対応、社内での板挟みなどネガティブなイメージを持っている人が多い。加えて、そもそもエンジニアは開発や研究を希望する傾向が強いので、品質関連のポジションが求める人材を集めることが困難になっているのだ。
そのため、エンジニアのバックグラウンドを持つ人を採用し、品質基準や対応方法などを教えながら育てていく、ポテンシャルの採用が多くなっている。「ただ、品質関連の人材は、これからさらに必要になる。現在もすでに、他の職種より若干募集要項が広いケースも出てきている。また品質に対する考え方や基準は今も変化しており、この変化を経験することによってキャリアのバリューも高まる。企業内の評価体制、品質管理体制が見直されているだけでなく、社会的にも重要な役割であることが認知されつつあり、今後重要な職種になることは間違いない」と関寺氏。実際、品質関連のポジションに転職した人からは、「やりがいがあって面白い」という声が多く聞かれるそうだ。
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