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「ものづくり白書」に見る、日本の製造業が持つべき4つの危機感ものづくり白書2018を読み解く(前編)(3/4 ページ)

日本のものづくりの現状を示す「2018年版ものづくり白書」が公開された。本稿では、本文の第1部「ものづくり基盤技術の現状と課題」の内容を中心に、日本の製造業の現状や主要な課題、課題解決に向けた取り組みなどを2回に分けて紹介する。前編では、4つの危機感の詳細とともに日本の製造業が直面する2つの主要課題について取り上げる。

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付加価値の創出と最大化

 2018年版ものづくり白書では、「現場力の維持と強化」と並ぶ日本の製造業の主要課題として、データ資源を活用したソリューション展開による「付加価値の創出と最大化」だと指摘している。

 IoTやAIなどのデジタル技術の発展に伴って「第4次産業革命」の波が、年を重ねるごとに世界各地に浸透してきている。業種や企業のビジネスモデル、さらには産業システム全体を抜本的に変える兆候があらゆる産業において現れ始めている※)

※)関連連載:いまさら聞けない第4次産業革命

 製造業においては、社会経済のデジタル化やサービス化というビジネスを取り巻く環境変化に対応したビジネスモデル変革の方向性が顕在化している。過去の困難な時期と比較しても、より本質的でより深刻な転換期を迎えていると分析する。こうした変化は、さまざまな業界において影響を与え始めている。ものづくり白書2018年版では、最も顕著な動きとして表れてきている産業として自動車産業を紹介している。

自動車産業のメガトレンド「CASE」とは何か

 自動車産業では「つながる(Connectivity)」「自動化(Autonomous)」「利活用(Shared&Service)」「電動化(Electric)」の頭文字を取った、いわゆる「CASE」がメガトレンドとなっている。この潮流への対応が、関連産業を含む日本における自動車産業の行く末を決めるカギとなるだろう。

 また、コネクテッド化や自動走行を織り込んだ「モビリティサービス化」(MaaS)が急速に拡大している。消費者の関心が「クルマの所有」から「移動手段としてのクルマの活用」へと移り、サービス化が進んでいる。従来のクルマ所有を前提とした、クルマづくりありきのビジネスモデルでは立ち行かなくなり、多様な個々の生活者のライフスタイルや社会課題を出発点とした、サービス中心のビジネスモデルが主導権を握ることが予想される(図4)。

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図4:モビリティサービス化の潮流(クリックで拡大)出典:2018年版ものづくり白書

サービス化は製造業にとっての「宝の山」

 製造業が一層の労働生産性を上げていくためには、ロボットやIT、IoTなどの活用や働き方改革を通した業務の効率化や合理化の追求だけではなく、いかにデジタル技術などを活用して新たな「付加価値」を獲得することが重要だ。そのためにはソリューション展開を図り着実に対価を得ていくことが求められている。

 設備の稼働状況、製品の品質情報や作業者の挙動といった製造現場系のデータについて、従来は機械的な収集が容易ではなく人間が一定ロットや工程単位で人海戦術による収集を実施していた。

 今後はセンサーやチップといったデバイスや画像認識技術などの進化に伴って、個体ごと・個別機械ごとの収集が容易となった点に特徴がある。このように、ものづくり企業の周囲には“宝の山”ともいえるリアルデータが潜在的に存在している。

 技術の進化によって、これらのデータを収集・活用できるようになりつつある。身近にあるデータ資源の存在とその重要性に気付き、サービス化やソリューション化などのビジネスモデルの変革に利用することができるかが今後の企業戦略上の鍵を握ると考えられる。

 経済のデジタル化やサービス化を中心とした日本の製造業を取り巻くビジネス環境が刻々と変化している。まず、そのような大きな変化を十分に認識することから始めるべきだ。さらに、現状のビジネス領域に満足することなく、ビジネスモデルやビジネス領域の転換などの意欲的な動きを通して、変化に対して備えていくことが日本の製造業に求められるだろう。

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