工場の「つながる化」を可能とする「管理シェル」とは何か:インダストリー4.0(2/4 ページ)
ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)の“IoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)”では、ドイツが進めるインダストリー4.0において、データ連携を実現する重要なカギとされている「管理シェル」について調査を行い、これを解説する調査報告書をリリースした。本稿ではこの概要を紹介する。
管理シェルの構造
管理シェルの技術的な詳細についてはまだプラットフォームインダストリー4.0などで開発を進めている段階である。ただ、管理シェルの大まかな構造についてはガイドラインが策定されている。管理シェルのベースとしては、デジタルファクトリー(DF)の標準「IEC62832」を参照している。管理シェルの構造としては、まずヘッダとボディーで構成されている。
ヘッダの役割
ヘッダでは、管理シェルとアセットを識別できる情報としてIDや識別子が割り振られる。識別子としてはURLを用いることができる。
ボディーの役割
ボディーは複数のサブモデルから構成される。これらのサブモデルを通じて、セキュリティ面や安全面、エネルギー面、製造能力などアセットのさまざまな側面について記述する(情報を取得する)ことが可能となる。
取得(もしくは制御)したい側面ごとに1つのサブモデルが存在する。これにより例えば、特定の工作機械のドリル情報についてだけ取得したり、制御したりすることができるようになる。
サブモデルの種類
サブモデルは明確に定義された何か1つの分野やテーマを扱う。管理シェル内にはこのサブモデルが複数含まれる。さらにサブモデルにはインダストリー4.0におけるアセットに多く適用される共通のサブモデルがありこれを「基礎サブモデル」とされている。一方でバリューチェーン上の取引企業の間で具体的な用途のために新たに作られるブモデルを「自由サブモデル」と位置付けている。
サブモデルはアセットのあらゆる側面に応じた形で作成されるが全てを自社のみで開発するのは現実的ではない。そのため、既に多数存在するさまざまな国際標準やコンソーシアムが策定した仕様を管理シェルに反映させる必要がある。例えば、安全に関する「ISO12100」「ISO13849-1」「IEC61508」「IEC61511」「IEC62061」といった標準がサブモデル「安全」の構成要素となり得る
サブモデルの属性情報
サブモデルは階層に分類された属性情報から構成される。アセットに関するデータの全て属性となり得る。どの属性を管理シェルに含めるべきかという点についてはプラットフォームインダストリー4.0ではまだ定められてはいない。ただ「基礎属性」「必須属性」「任意属性」「自由属性」を区別する必要があることは決められている。
「基礎属性」は標準化された必須の属性で全ての管理シェルに適用される。「必須属性」は標準化された必須の属性でサブモデルに適用される。「任意属性」は標準化された属性だがサブモデルへの適用は任意というものだ。「自由属性」は独自に設定される限定された用途の属性である。
ビューの設定
管理シェルはサブモデルの属性を介してあらゆる情報を提供できる。しかし、その情報を全ての人が必要なわけではなく、ユーザーグループで必要な情報を見られるように「ビュー」を設定する必要がある。ビューは複数の属性で構成される。プラットフォームインダストリー4.0では「ビジネス」「設計」「性能」「機能」「位置」の5つの基礎ビューを定めている。
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