インテルがデータセンター向けFPGAカードの第2弾「従来比4〜5倍の性能を発揮」:組み込み開発ニュース
インテルは、ソフトウェア開発者でもFPGAを容易に扱える環境を用意した「インテル プログラマブル・アクセラレーション・カード(PACカード)」の第2弾として、ハイエンドFPGAである「Stratix 10 SX」を搭載する品種を追加したと発表した。提供時期は2019年前半を予定している。
インテル(Intel)は2018年9月25日、ソフトウェア開発者でもFPGAを容易に扱える環境を用意した「インテル プログラマブル・アクセラレーション・カード(以下、PACカード)」の第2弾として、ハイエンドFPGAである「Stratix 10 SX」を搭載する品種を追加したと発表した。ミッドレンジFPGA「Arria 10 SX」を搭載するPACカードの第1弾よりも大規模なデータ処理を行う用途に向ける。HPE(Hewlett Packard Enterprise)が採用を決めており、提供時期は2019年前半を予定している。
PACカードについては、2017年10月に国内向けに披露され※1)、2018年4月にデルEMC(Dell EMC)と富士通がサーバ製品群に採用したことが発表されている※2)。今回発表したStratix 10搭載版PACカードは、従来のArria 10搭載版では対応できなかったアプリケーションに対応するためのもので「Arria 10搭載版の置き換えではなく、ポートフォリオを広げることが狙いだ」(インテル日本法人 プログラマブル・ソリューションズ事業本部 データセンター&コミュニケーション統括部 事業開発マネージャーの山崎大輔氏)という。
Stratix 10搭載版PACカードは、FPGAの回路規模が280万ロジックエレメント、DDR4メモリの容量は32GB、外部インタフェースは100Gビットイーサネットが2チャンネル、最大消費電力は225W、占有するスロット数も通常のPCI Expressカード2枚分となっている。「FPGAのロジックエレメント数が2.4倍でオンチップメモリが4倍、DSPブロックが3.8倍、DDR4メモリは4倍、外部インタフェースの帯域幅は5倍以上。実際に、Arria 10搭載版PACカードと比べて、4〜5倍の性能を発揮できる」(山崎氏)。
今回の発表を受けて、4K映像のマルチチャネルビデオトランスコードや、ビッグデータのストリーミング分析、リスク/レギュレーション管理といったより負荷の大きいデータ処理についてはStratix 10搭載版PACカードの提案を進める。なお、Stratix 10搭載版PACカードに対応するアプリケーションについては、ビデオトランスコードでAdaptive Microwaveが、ストリーミング分析でMegh Computingが開発を表明している。
一方、バックテストやデータベースアクセラレーション、イメージプロセッシングなどは現行のArria 10搭載版PACカードで対応可能とする。AI(人工知能)やゲノム分析などは、データ処理の規模によって両者を使い分けることになる。
アクセラレーションライブラリの評価が手間いらずに
山崎氏は、PACカードのエコシステム拡充が進んでいることも強調した。仮想化ソフトウェア大手のVMwareは2018年8月に「vSphere」によるPACカードのサポートを発表しており、NTTアドバンステクノロジは同年9月にOpenStack環境におけるFPGA回路のリソース管理を動作実証したことを報告している。また、インテルとして、Linuxカーネルに実装可能なFPGAドライバのアップストリーム活動を推進している。
この他、インテルのCPU「Xeon」のソフトウェアとFPGAを同じ開発環境で扱えるようにした「インテル アクセラレーション・スタック」で利用可能なサードパーティー製のアクセラレーションライブラリの評価を、ベンダーとの個別契約などを省いて進められる「Intel Workload Storefront」という仕組みも用意した。「現在は評価用のストアフロント型サイトだが、将来的にはアクセラレーションライブラリの販売窓口にしていくことも検討している」(山崎氏)という。
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