半導体のスーパーサイクルをつかむ、エンジニアリングチェーンのつなぎ方:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
2018年9月12日に開催された東洋経済新報社主催のセミナー「製造業のデジタル変革を支えるPLMの最適解」に登壇したシンフォニアテクノロジー 執行役員 電機システム本部副本部長 兼 豊橋製作所長の花木敦司氏の講演内容を紹介する。
PLM(Product Life cycle Management)システムといえば、設計部門のソフトウェアだと見られがちだが、製造部門の発信によりPLM導入を進めたという珍しい例がある。半導体のクリーン搬送装置などさまざまな産業機械のメーカーであるシンフォニアテクノロジーだ。
2018年9月12日に開催された東洋経済新報社主催のセミナー「製造業のデジタル変革を支えるPLMの最適解」に登壇したシンフォニアテクノロジー 執行役員 電機システム本部副本部長 兼 豊橋製作所長の花木敦司氏の講演内容を紹介する。
半導体で生まれるスーパーサイクルにどう立ち向かうか
シンフォニアテクノロジーは1917年創業の歴史のある産業機械メーカーである。モーション制御機器や搬送機器などを中心とした産業機械を、自動車や航空・宇宙、食品など多岐にわたる業界に納入している。花木氏が所属する豊橋製作所では半導体クリーン搬送装置や振動機器、パーツフィーダー、自動車試験装置などの製造を行っている。特に現在大きく伸びているのが半導体クリーン搬送装置である。
半導体クリーン搬送装置の顧客となるのは、半導体メーカーおよび半導体製造装置メーカーなどである。半導体市場は、IoT(モノのインターネット)デバイスの急増などにより、需要増と価格上昇が同時に起こるスーパーサイクルに入ったとされており、半導体製造装置などの需要も急増している。
これらの好況に対する中で、モノづくり領域ではさまざまな問題が発生していたという。設計業務では、数量の増加に伴い、繰り返し品の間接業務が大きく増えており、作業リソースを圧迫し始めていた。さらに変更管理業務にかかる検索時間の増大、図面修正ミスによる誤手配なども課題となっていた。一方で製造部門では2018年10月にSAPのERPを導入することを決めており、M-BOMの整備が必要になっていた。そのためには既存のPLMでは機能不足になっていたという。
花木氏は「スーパーサイクルを迎える中で繰り返し品増加で時間を取られ、新規開発に向けるマンパワーが不足していた。これらに対応していくには新たなやり方を進めなければならないと考えた」と述べている。
花木氏は製造部長から工場長になり、製作所長になったという経緯から工場の革新活動などを主導してきた立場だが、これらの業務効率化の観点で見た場合、上流のエンジニアリングチェーンのつながり方に課題を感じたという。
「製造部長時代は製造のことばかりを考えていて気付かなかったが、工場長になりエンジニアリングチェーン全体を見ると、上流のシステムに課題があると感じた。属人管理となっており、データなどがつながっていない。誰かが休むと作業が滞るというような状況が頻繁に生まれていた。一方で、当時導入していたPLMは自社で全ての機能を開発する必要があり、PLMとして機能させることができていなかった。このままではスーパーサイクルの波を逃すのではないかと不安になった」と花木氏は危機感について述べる。
これらの課題を解決するために新たなPLMシステムの導入を決めたという。その後、他社の工場見学やヒアリング、セミナーへの参加などで情報収集を進め、経営陣に対しては「売上高急増による業務破綻リスク回避」を訴えて、システム導入資金の確保を取り付けたという。さらにコンペには主役となる設計関係者へのプレゼンを条件とし、中心となる関係者がやる気になるような体制を構築したという。
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