MaaS時代の一人一人に合わせたサービスへ、変わる自動車保険:つながるクルマ キーマンインタビュー(1/3 ページ)
トヨタ自動車がクラウン、カローラスポーツを皮切りに展開を強化するテレマティクス保険について、あいおいニッセイ同和損害保険 トヨタ事業部 部長の荒川裕司氏と、トヨタ自動車 国内企画部 コネクティッド・新規事業PT プロジェクトリーダーの垣迫和行氏に話を聞いた。
コネクテッドカーから取れたデータで何をするか――。
トヨタ自動車は、2018年6月に発売した「クラウン」「カローラスポーツ」を手始めに、新型車にDCM(データコミュニケーションモジュール、車載通信機)を標準搭載にして本格的にコネクテッドカーを普及させる。DCMから得た車両の挙動と位置情報は「モビリティサービス・プラットフォーム」に集めてビッグデータとして活用し、新しいサービスの創出に結び付ける方針だ。
DCMは、クルマを売ってメンテナンスする従来のビジネスにおいても重要な役割を果たす。オーナーとの接点を増やし、関係を深める上では、クルマの状態に関する情報を詳細に収集できることが、その人に合ったサービスの提供に役立っていく。的確なサービスをより多く享受できると認知されれば、ゆくゆくは“つながる”ということにおカネを払ってもらう余地も生まれるかもしれない。
「安全運転なら保険料を割り引き」と自動車保険がうたうのも、サービスを個々人に合わせた1つの例だといえる。トヨタ自動車がクラウン、カローラスポーツを皮切りに展開を強化するテレマティクス保険について、あいおいニッセイ同和損害保険 トヨタ事業部 部長の荒川裕司氏と、トヨタ自動車 国内企画部 コネクティッド・新規事業PT プロジェクトリーダーの垣迫和行氏に話を聞いた。
事故を起こさない人が得をする
MONOist テレマティクス保険の計画はどのようにスタートしましたか。
荒川氏 計画は3〜4年前からスタートした。テレマティクス保険の走りは、トヨタ自動車の車載情報機器「G-BOOK」を媒介にして、走行距離の情報を得る「PAYD」という商品だ。クルマの進化により正確な運転挙動を飛ばしてもらうことが可能になり、自動車保険に運転挙動を反映できるようになった。
MONOist 企画で特に意識したユーザー層はありますか。
荒川氏 既存の等級制度の割引に加えて、安全運転であれば保険料が割引になるというものなので、全てのお客さまにメリットを提供できると考えている。運転挙動を保険料に反映するのは、日本初の取り組みだ。安全運転の度合いをスコアによって分かりやすくすることにより、遠くに住んでいる高齢の両親を心配する人や、遠くで一人暮らしする子どもの運転状況を知りたい人など、幅広い層や家族構成にあまねく効果を出すことが考えの中心にある。
その中でも、トヨタ自動車のコネクテッドカー向けの保険ではあるので、コネクテッドカーの魅力の1つとして、集中して販売していきたい。自動車保険はさまざまだが、コネクテッドカーの精緻なデータを保険料に反映できる保険は当社のものだけだ。
MONOist テレマティクス保険の目的はどういったところにありますか。
荒川氏 1番は、安全運転に帰する自動車保険を作ることだ。事故のない安心安全なクルマ社会に保険でどう貢献できるか。運転の習慣や癖をビッグデータ解析によって判別し、保険料に反映することで安全運転に対する意識を高める。今までの保険は事故を起こした時の対応が主だった。今回のテレマティクス保険はそれだけでなく、事故を起こさないお客さまへの付加価値も提供する。
お客さまにとっては、保険料に反映される新しい項目となるので、許容性があるかしっかり議論した。安全運転に近づけ、事故のない社会を実現するために、お客さまにとってメリットになる具体的なインセンティブを持たせることに踏み込んだ。保険料に運転挙動を反映する自動車保険は、日本では珍しいが海外では欧米を中心に広がっている。われわれは英国の保険会社Box Innovation Groupを2015年に買収しており、そのグループ会社であるInsure The Boxから多くのノウハウを学んだ。
垣迫氏 販売店と一体となって、お客さまにしっかり安心安全を提供する必要がある。DCMの標準装備化は、コネクテッドサービスを提供する中で、お客さまとダイレクトかつリアルタイムにつながることが大きな狙いだ。そのつながりの中で、より一層安心を提供しようというのが、テレマティクス保険だ。
保険というのは、事故を起こしても安心してサポートを受けられることが大前提にある。それに加えて、安全運転を促すことが今回のテレマティクス保険のポイントだ。運転挙動について、データでお客さまが確認できて、運転に対するアドバイスを受けられる。今までにない大事な要素がここに入っている。
MONOist 従来の自動車保険に対して、どのような要望が寄せられていましたか。
荒川氏 これまでは年齢や車種だけで一律に保険料が決められていた。若い人は傾向として事故を起こしやすくいので保険料が総じて高くなるが、安全運転を心掛けている若い人も多くいる。今までの一律の保険料では、それが反映できていなかった。運転挙動が入ることで、一人一人のお客さまの要望にも応えられるのではないかと考えている。この部分はもっと深めていきたい。ただ、年齢や車種で保険料が決まる仕組みは、公平性を保つためのベースとなる。これに新しい要素を加えていくことになるのではないか。
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