中小製造業の事業承継問題、由紀ホールディングスが昭和金型の事業を承継へ:技術承継
由紀ホールディングスグループのVTCマニュファクチャリングホールディングスは2018年7月30日、昭和金型製作所の株式を取得し、由紀ホールディングスグループに加えたことを発表した。
由紀ホールディングスグループのVTCマニュファクチャリングホールディングスは2018年7月30日、昭和金型製作所(以下、昭和金型)の株式を取得し、由紀ホールディングスグループに加えたことを発表した。昭和金型の持つ金型設計および製造機能を同グループ内のキャストワンへ移設し、新規金型製造の能力を拡充する狙いとしている。
由紀ホールディングスは、航空機・宇宙関連業界での部品採用実績など高い技術力で注目を集める金属精密加工企業である由紀精密の代表 大坪正人氏が2017年10月に設立した持ち株会社である。由紀ホールディングスでは、国内の高い要素技術を持つモノづくり企業にイノベーション投資を進め、現在はグループ企業11社、売上高総額66億円、従業員数540人となっている。
今回、事業承継を発表した昭和金型製作所は、1971年から東京都大田区で金型の設計、製造を手掛けてきた企業だ。各種3D CADやCAMを使用し、複雑な自由曲面を有する金型を短納期で製造。多くの企業の要望に応えてきた実績がある。しかし、後継ぎ候補がおらず、また最近では経営に苦戦していたという。
一方で、アルミ鋳造をおこなうキャストワンは金型製作機能の拡充が課題となっていた。アルミ鋳造においては金型を内製できることは大きな利点となる。昭和金型製作所の金型事業単体での継続が難しい中で、両社の利点が一致することから、今回キャストワンの金型部門立ち上げと同部門への昭和金型製作所の事業承継を決めたという。昭和金型製作所の代表取締役の森征一氏はそのまま経験値を生かし、部門責任者として同部門を統括する計画だという。
また、東京都大田区の昭和金型製作所本社工場は、都心に近い利点を生かして由紀ホールディングスグループの研究開発拠点としての機能転換を図るという。
中小製造業では、高い技術力は持つものの、後継者不足などで事業の継承ができずに廃業するケースが目立っており、製造集積地での社会問題となっている。由紀ホールディングスではこうした課題解決に取り組み、製造業のグループ化による「技術継承」を推進していく方針を示している。
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