パナソニックを100年支え続けた事業とは? その強さの秘訣を探る(後編):メイドインジャパンの現場力(18)(2/4 ページ)
世界中の多くの製造業が祖業を手放す中、パナソニックはいまだに配線器具市場で大きなシェアを確保している。その強さの秘訣とは何だろうか。本稿では前編でパナソニックの配線器具事業の概要について、後編で配線器具事業のマザー工場である津工場の現場力について紹介する。
工程内の全自動化が進む津工場
津工場では、これらの技術力を背景としつつ自動化を徹底的に進めており、工程の多くを全自動化していることが特徴である。一方で、カスタム品など多品種少量生産が求められる製品については、人手を中心としたセルラインを用意するメリハリのある体制を作っている。
吉岡氏は「自動化しやすい部分とそうではない部分があるが、配線器具には共通のものを大量に作るところがあり、共通化ができる部分は自動化を徹底的に進めている。各種設計から、金型、部品、製品組み立てまで一貫して生産するからこそ、全自動化の領域を増やすことができる面もある」と強みについて述べている。
複雑な形状を全自動で成形
具体的に各工程について見ていく。配線器具の製造は主に金属加工による成形部品と、樹脂成形による外形部品で構成され、これらを組み立てることで完成品とする。
金属加工はプレス加工などが中心で、順送プレス加工などを全自動化している。また、完成部品を収納する容器の自動交換を行う仕組みを採用し完全無人作業を実現している点が特徴だ。
また、配線器具の中で重要な金属部品として「錠ばね」がある。前編で紹介した「速結端子」を構成する重要な部品だが、複雑な形状の錠ばねを高速成形する「マルチフォーミング加工」を採用している。
マルチフォーミング加工は、連続的にコイル材を自動送りして打ち抜き加工や曲げ成形加工を自動で行う加工方法。金属材の複雑な形状の成形を簡単に行える他、材料のロスが少なくなる点が利点である。津工場では数多くのマルチフォーミング加工機を採用してこれらの錠ばねを製造しているが、津工場内で製造する完成品向けだけでなく、海外工場にも部品として供給しているという。
工程の全自動化を進めると、機械の停止が大きな悪影響をもたらすことになる。そこでメンテナンス体制なども高度化を進めている。金属加工の重要なカギを握る金型は津工場内で開発している他、メンテナンスも徹底。IoT(モノのインターネット)活用などは「今後の検討課題」(説明員)としていたが、ショット回数や使用環境などを記録することで、壊れる前にメンテナンスを行う予防保全を行っているという。
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