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ドーピング禁止物質の分析技術を開発するラボを設立:医療機器ニュース
産業技術総合研究所の計量標準総合センターは、「ドーピング検査標準研究ラボ」を設立した。ドーピング検査における、分析値の信頼性向上に資する研究に取り組む。
産業技術総合研究所は2018年7月2日、計量標準総合センター(NMIJ)が同月1日に「ドーピング検査標準研究ラボ」を設立し、ドーピング検査における分析値の信頼性向上に資する研究を行うと発表した。迅速で正確なドーピング禁止物質の分析技術を開発し、オリンピックなどの国際競技大会でのドーピング検査基盤強化への貢献を目指す。
同ラボでは、定量核磁気共鳴分光法(qNMR)に影響を与える不純物のみを取り除く安価な候補標準物質の合成および精製技術を確立し、標準物質を大量に消費しないよう低濃度化した溶液の安定性確保に向けた要素技術を開発する。高感度qNMRの実用化、qNMRの正確性に影響を与える類似構造の不純物を排除する手法の開発も行う。
ドーピング禁止物質の多くは、大量に合成することが難しい代謝物などだ。qNMRを用いた校正技術では、ほとんどの有機化合物に含まれるプロトンの個数を正確に比較できるため、数種類の国家標準物質があれば、さまざまな標準物質の濃度や純度を定められる。
同ラボで構築した技術は、NMIJから認証標準物質や校正サービスとして、また、試薬メーカーなどを通じてNMIJトレーサブル標準物質として、2019年度より検査分析機関に供給する予定。将来的には、分析基盤をドーピング禁止物質以外にも拡張し、臨床検査薬などの分野にも展開することを目指す。
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