IoT時代の「日本品質」の構築は「見える化」と「紙をやめること」から始めよう:MONOist品質管理セミナー(1/3 ページ)
MONOistが開催した品質管理セミナー「品質管理を現場の“人”に押し付けないために何ができるのか〜IoT時代だからできる品質向上の実現手法〜」では、「日本品質」の構築を実現するために“人”の強みを踏まえつつ、IoTやAI、ロボティクスといった品質改善活動に貢献する新たな手法やツールについて紹介した。
MONOistは2018年6月8日、東京都内で品質管理セミナー「品質管理を現場の“人”に押し付けないために何ができるのか〜IoT時代だからできる品質向上の実現手法〜」を開催した。同セミナーでは「日本品質」の構築を実現するために“人”の強みを踏まえつつ、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボティクスといった品質改善活動に貢献する新たな手法やツールについて講演を通じて紹介した。
基調講演では「元パナソニック プロダクト品質の番頭が語る"品質"の視点でひも解く日本の製造業の未来」をテーマに、M.A信頼性技術オフィス代表の本山晃氏(元パナソニックプロダクト解析センター主幹技師)が登壇。パナソニックでの品質改善活動などの実績を踏まえて、「品質」に取り組む上で基本となる考え方や「見える化」の重要性、製造ラインおよび商品におけるデータ活用の典型例を解説した。
本山氏は、まず「品質の定義」について、「ISOでは、本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」であり、「JISでは品物またはサービスが、使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質/性能の全体」とされていることを紹介した。これは例えば、洗濯機であれば汚れが良く落ちる、洗濯物が痛まないなど、その製品が持つ性能あるいは機能と、顧客が求める性能/機能との合致のレベルが「品質」となる。ただし「充足すれば“当たり前”と受け取られ、不充足であれば『不満』を引き起こす『当たり前品質』となっている」という。合致レベルにはユーザーが期待している機能に加えて利用可能な期間も入っており、この品質で欠陥(品質異常、トラブル)があると重大な「市場クレーム」「顧客不満足」に直結する。
また、品質には「市場品質」(当たり前品質が実際の市場で結果として表れたもの)、「部品品質」(部品特性の規格に対し、製造過程がどのレベルで品質を造っているかを示すもの)、「工程品質」(製造する製品特性の規格に対し、製造工程がどのレベルで品質を造っているかを示すもの)があり、今回の講演では、主に部品品質と、工程品質についての、見える化について説明した。
本山氏によると「見える化とはデータのグラフ化に他ならない。顧客が求める性能や期間との合致レベルを発売前に知ることができるという意義がある」という。そして、その事例として、「市場不良率低減のための見える化とデータ活用」(発売前にどういうチェックをするのか)、「工程改善のための見える化とデータ活用」(現状の製造ラインの実力レベルとバラツキのグラフ化)などを取り上げた。具体的には、設計段階で製品を構成する部品品質が顧客の要望を満足するか否かを、故障数の分布の見える化で発売前に把握するというもの。これは製品が顧客の使用する条件で、要望を満足させるように、その構成部品を選定して設計することにつながる。
また、製造工程における製造品質のレベルの見える化により、常時安定した工程であるかを把握する。これにより、製造する製品特性の規格に対し、製品工程がどのレベルで品質を造っているかを常時調べることで工程の安定を図る。
製造工程での測定データをグラフ化すれば、日々の製造状況(変化点など)が認識できるという。例えばネジの外形寸法を計測して、毎日「外形寸法の平均値を縦軸」にしてグラフ化することで、外形寸法のばらつき状況が一目で分かるようになるとしている。
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