「ジムニー」が20年ぶり全面改良、「ジムニーシエラ」には新開発エンジン採用:車両デザイン
スズキは2018年7月5日、軽自動車「ジムニー」とコンパクトカー「ジムニー シエラ」を20年ぶりにフルモデルチェンジして発売したと発表した。
スズキは2018年7月5日、東京都内で会見を開き、軽自動車「ジムニー」とコンパクトカー「ジムニー シエラ」を20年ぶりにフルモデルチェンジして発売したと発表した。
1970年に発売して以来、伝統となっている基本構造を継承しながら、4WD(四輪駆動)性能を進化させた。また、合理的で無駄のないデザインで、林業や狩猟、森林警備などのプロユースにも応える使い勝手を追求したとしている。また、運転支援パッケージ「スズキセーフティサポート」は上位グレードで標準装備とした。
生産は湖西工場(静岡県湖西市)で行い、グローバルに供給する。年間販売目標台数はジムニーが1万5000台、ジムニー シエラが1200台。価格はジムニーが145万円から、ジムニー シエラが176万円からとなる。
ユーザーの声を基に伝統を継承
ラダーフレームは新設計となる。Xメンバーと前後のクロスメンバーを追加してねじり剛性を先代モデル比で1.5倍に向上させた。ラダーフレームと車体をつなぐボディーマウントゴムは大型化するとともに上下方向に柔らかくし、フレームから車体に伝わる振動を低減して乗り心地を改善。水平方向には固くすることで優れた操縦安定性を実現するとしている。
新型ジムニー、ジムニー シエラはともにエンジンを縦置きにしたFRレイアウト。エンジンをフロントタイヤの前端より後方に配置することで、大きな凹凸を乗り越えられるアプローチアングルを確保した。最低地上高はジムニーが先代モデルと同等の205mm、ジムニー シエラは先代モデルより10mm高い210mmとなる。
4WDシステムは、舗装路では後輪駆動で、雪道や荒れ地など後輪駆動での走行が困難な場合は4WD(高速)に、ぬかるんだ道や急こう配などで大きな駆動力が必要な場合には、2倍の駆動力を発揮する4WD(低速)に、機械式副変速機で切り替えることができる。センターデフなど複雑な構造を用いないシンプルなパートタイム4WDを採用している。3リンクリジットアクスル式サスペンションも継承。凹凸のある路面でも優れた接地性と対地クリアランスを確保するという。堅牢な構造で信頼性を高めたとしている。
4WD(低速)のモードでは、電子制御によるブレーキLSDトラクションコントロールが作動する。フロントとリアのデフにLSD(リミテッドスリップデフ)を装着すると、舗装路での走行やメンテナンスが課題となった。ブレーキLSDトラクションコントロールでは、空転した車輪にだけブレーキをかけることで接地している車輪の駆動力を確保して高い脱出性能を実現するという。
新型ジムニー シエラには、排気量1.5l(リットル)で新開発の「K15B型エンジン」を搭載する。「スイフト」の先代モデルに搭載されたエンジンがベースだが、ボアアップにより排気量を増やし、オフロード走行向けにトルクアップを図った。また、FR向けにチューニングを施している。水や泥からベルトを守るベルトカバーや、雪や泥水の影響を受けにくい吸気レイアウトにより、信頼性を向上した。加えて、街乗り向けのモデルよりも重いフライホイールを採用し、低回転数でゆっくり走る場合にも滑らかに走行できるようにしているという。圧縮比は10.0に下げ、各国の燃料の品質の違いによる影響を受けにくくするとともに、低速トルクを確保した。
新型ジムニーは、専用チューニングの「R06A型ターボエンジン」を採用する。軽自動車の他のモデルでも搭載実績があるが、ジムニー専用のフライホイールを採用するとともに、ジムニー シエラと同様に雪や泥水の影響を受けにくい吸気レイアウトにした。
ジムニーとジムニー シエラのユーザーは8割が個人だが、残りの2割は林業や狩猟、森林警備などの業務用途となっている。今回の全面改良にあたっては、業務用途も含めたユーザーの声を反映し、4WD性能や見切りのよさ、さまざまな道に適応して走破できることを重視したという。
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