検索
ニュース

学生フォーミュラは中国からの参戦が増加、EVにシフトする出場常連も学生フォーミュラ

自動車技術会は2018年7月4日、「第16回 全日本学生フォーミュラ大会」(学生フォーミュラ)に関する記者説明会を開催した。今大会の会期は2018年9月4〜8日、会場は静岡県の小笠山総合運動公園(エコパ)。

Share
Tweet
LINE
Hatena

大会実行委員長の玉正忠嗣氏

 自動車技術会は2018年7月4日、「第16回 全日本学生フォーミュラ大会」(学生フォーミュラ)に関する記者説明会を開催した。今大会の会期は2018年9月4〜8日、会場は静岡県の小笠山総合運動公園(エコパ)。

 学生フォーミュラでは大学や専門学校などのチームが小型のフォーミュラカーを製作し、実車を持ち込んで実施する審査会で順位を競う。エコパでの審査会では5日間かけて、車検や静的審査(企画やデザイン、設計などのプレゼンテーション)、動的審査(実車での走行)を実施する。審査会は単なるレースではなく、車両の企画から設計、製作、走行まで一貫した評価を目的とする。

 今回、大きなレギュレーション変更はない。ICV(ガソリン車)とEV(電気自動車)クラス共通で、「タイヤがカウルでおおわれてない、コックピットがオープンなタイプのフォーミュラカーであること」が定められている。また年間1000台程度の生産を想定したビジネスモデルに基づくこととする。

 ICVクラスの車両のレギュレーションは、排気量710cc以下の4サイクルエンジンとし、排気音量は所定条件で110db以下と定めている。EVクラスの車両のレギュレーションは、バッテリーからの最大電力が連続的に80kWを超えないこと、電気モータ数の搭載制限はなし、最大公称作動電圧は600VDCとし、エネルギー回生も認められている。

 今回、ピットと審査エリアについては、過去大会のように東エリアの駐車場に設置される。2019年開催のラグビーワールドカップに向け、2018年まで動的審査会場にしていたエコパスタジアムの改修工事が実施されているためだ。ただし静的審査のプレゼンテーションについてはエコパスタジアム内で行う。


今回の会場レイアウトについて

 今回のエントリー数は合計138チームで過去最多となった。そのうち、ICVクラスが109チーム、EVクラスが29チーム。大会事前にエントリーチームの書類選考が実施され、参加チームは最大98チームに絞られる。初エントリーとなったのが、群馬大学と三重大学。出場常連校である豊橋科学技術大学はICVからEVクラスに変更しての参戦となる。

 海外勢としては、オーストリアから2016年の14回大会で総合4位となったヨアネウム応用科学大学(U.A.S.Graz)が参戦する。中国からは12チームがエントリーし、そのうち6チームの参加が決定。さらにそのうち4チームはEVクラスでの参戦となる。

参加チーム代表がプレゼン


Shiba4のプロジェクトリーダーである、芝浦工業大学 工学部 機械機能工学科3年 諏訪一樹さん

 芝浦工業大学の「Shiba4」はチーム創設が2003年と比較的古く、学生フォーミュラ開催初期からの出場常連校である。過去は、同校の工学部の研究室における研究テーマとしての活動であったが、紆余曲折しつつも2008年から体育会の部活動として再発足。2017年の15回大会では総合2位だった。いよいよ今回の大会では総合優勝を狙う。

 今回の車両「S015」のコンセプトは「G」で、「ゴブリン」の頭文字であるという。「小さくて強い」ゴブリンをイメージしているという。過去の車両コンセプトを引き継ぎつつ、長所を引き出していくという。また今回は静的審査で高得点を出すことも目標としている。また今回はシェイクダウン時期を極力前倒できるように設計開発をコンパクトに進めて、車両のセッティングや試走に時間を費やせるようにしたとのことだ。


S015のデザイン

開発中のS015車両実機:おなじみの黄色のカウルが乗る予定

KURAFTのプロジェクトリーダー、神奈川大学 機械工学科4年 田村健昇さん

 神奈川大学の「KURAFT」は2013年に大学院のメンバーが主体となって立ち上げて、「学生有志団体」として活動している。同チームは設立当初からEV一本に絞った活動をしてきた。2013年当時は既にICVクラスが成熟していたことから、まだスタートしたばかりだったEVであれば新参でも優位に戦えると考えたからだという。また、EVであれば機械と電気、化学などの分野を横断したモノづくりが学べることも利点として挙げた。自動車業界全体がEVにシフトしつつあることも考えた。

 チームとしては4回目のチャレンジとなった2017年の第15回大会では、初めて車検を通過し、全競技参加となった。それ以前までは車両の完成や車検の通過に苦労していた状態であり、そこからのステップアップとなった。今回は、前回成し遂げられなかった、動的審査のエンデュランス(耐久走行審査)の完走を目指し、高得点を獲得して順位アップを狙う。


KURAFTによる今回の車両デザイン

 今回の車両では、重要開発項目として「駆動用バッテリーの集約」を掲げる。バッテリーは最も重量がかさむ部位であるため、そこに集中することで効率的な車両アップデートを目指した。前回までドライバーの両脇に設置していた2つのバッテリーを、今回は1つにしてドライバーの背後の重心付近に設置するようにした。車両重量については前回は357.5kgだったところ、今回は285kg。前回の車両重量から−72.5kgと大幅減量となった。ヨー慣性モーメントは設計値で、前回車両の−26%の低減となった。


重量が大幅低減!

開発中の車両実機

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る