AIで実現するパナソニックの「ヨコパナ」、1000人のAI人材確保も着実に進む:人工知能ニュース(2/2 ページ)
パナソニックがAI活用戦略について説明。AI開発の方向性「E3(イーキューブ)-AI」や、3+1の注力分野、AI相談の社内向けワンストップサービス「DAICC(ダイク)サービス」などについて紹介した。かねて発信している、2020年度までのAI人材1000人の確保に向けた取り組みも着実に進めているという。
サイバーフィジカル時代のAI
AIを道具として進化させていく上での取り組みとしては、2017年10月に買収を発表した米国のデータ解析会社であるアリモ(Arimo)のようなM&Aやパートナーシップに加えて、国内外大学などとのオープンイノベーションがある。
また「サイバーフィジカル時代のAI」として、E3-AIというコンセプトを打ち出した。E3-AIは、コストと性能を両立する「Embedded(組み込み)」、AI判断の根拠から対策が打てる「Explainable(説明可能)」、使うほど進化する「Evolutional(進化)」から成る。「Embeddedはこれまでも注力してきたマイコンへのアルゴリズム組み込みなどで、画像や音声の認識を中心に実績があり、自前でやっていける基礎がある。あまり取り組んでこなかったExplainableとEvolutionalについては、M&Aやパートナーシップ、オープンイノベーションを積極的に活用していく」(九津見氏)としている。
また、道具としてのAIを、ドメイン知識を持つ人々に展開する方向性としては、「Home Tech」「Mobility」「Energy」の3分野と、AI展開の基盤となる「Deep Learning&Data Analytics」を組み合わせた「3+1」に注力する。
「Home Tech」では、新たな住空間の提案に向けた「HomeX」プロジェクトなどでAIを活用している。「Mobility」では、サイバー攻撃パターンの学習や、自動運転のセンシング処理、カーシェアリングの配車管理などがAIの活用事例となる。そして、2017年度の1年間で最もAIの相談件数が多かった「Energy」では、バッテリーマネジメントサービスへの活用が検討されている。
この他、ドメイン知識を持つ人々がより容易にAIを道具として利用できるようにするDAICC(Data&AI for Co-Creation、ダイク)サービスを2018年春からスタートしており、既に約30件の相談が入っているという。
なお、パナソニックでは、2020年度までにAI人材を1000人に増やす方針を示している。これはAIそのものの開発を行う人材というよりも、AIを道具として使いこなす人材となる。そのために用意したAI人材育成プログラムも好評で、2017年度末までのAI人材数は予定の220人を上回る318人となった。このうち約100人がAIソリューションセンターの人員となる。今後は2018年度末に約500人まで増やし、その後2020年度末までの1000人の達成を目指す。
九津見氏は「今後5〜10年以内に、AIを活用した事業の売り上げ規模を数百億円にまで高めたい」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- パナソニックが目指すAIの“使いこなし”とは
パナソニックがAI(人工知能)の活用に注力する姿勢を鮮明にしている。2017年4月に新設したビジネスイノベーション本部傘下のAIソリューションセンターは、AIの“使いこなし”を進めて、従来にない新たな事業の立ち上げも担当していく方針だ。同センター 戦略企画部 部長の井上昭彦氏に話を聞いた。 - パナソニックに“出戻り”のCerevo岩佐氏、100年企業に与える「いい刺激」とは
ハードウェアベンチャーの雄、Cerevo(セレボ)の代表取締役である岩佐琢磨氏が、2007年の同社創業前に勤めていたパナソニックに11年ぶりの“出戻り”を果たす。なぜパナソニックへの“出戻り”を決めたのか。そして、パナソニックで何をやろうとしているのか。同氏に聞いた。 - 「モノ」から「コト」を本格化、パナソニックが取り組む新規サービス事業
パナソニックは2018年6月13日、「モノ」から「コト」へシフトする新たなサービスビジネス事業について説明を行った。 - パナソニックがシリコンバレーに設立した「Panasonic β」で「ヨコパナ」を実現
パナソニックは、デジタル時代に対応する“もう1つのパナソニック”として米国シリコンバレーに「Panasonic β」を設立した。Panasonic βは、組織や職能の壁を超えて横連携を行う「ヨコパナ」を小さな形(ミニヨコパナ)で実現し、イノベーションを量産するマザー工場に位置付けられている。 - イノベーションの量産は可能か、パナソニックが目指す“コト作り”の製造装置
パナソニックは、2017年4月に新設したビジネスイノベーション本部の戦略として、社会課題の解決に向けたイノベーションを量産化する仕組み作りに取り組む方針を示した。 - パナソニックが売上高数百億円の事業部を複数創出へ「IoT時代は最大のチャンス」
パナソニックがイノベーション推進に向けたグループの研究開発戦略について説明。「IoTの時代を最大のチャンスと捉えて、新しい事業を作り出していく」(同社 代表取締役専務の宮部義幸氏)として、新設のビジネスイノベーション本部の活動により、現行37事業部と同等レベルに成長し得る事業を、数年内で複数創出していく方針を示した。