医療機器向けマグネシウム合金部材を高精度に成形する技術:医療機器ニュース
不二ライトメタルは、医療機器にも適用可能なマグネシウム合金部材の成形技術を開発した。マグネシウム合金を高精度に成形加工でき、高い機械的特性や体内での分解性能を持つよう組織の制御も可能にする技術だ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年6月5日、NEDO事業において、不二ライトメタルが、医療機器にも適用可能なマグネシウム合金部材の成形技術を開発したと発表した。
低侵襲性治療のための医療機器材料として期待されるマグネシウム合金を、体内で安定して分解・吸収させるには、加工精度を高度化し、均一な肉厚にする必要がある。しかし、マグネシウム合金は塑性加工性が低く、変形しにくいため、均一な肉厚の管材に成形加工することは難しかった。
不二ライトメタルは、マグネシウム合金の細管押し出し、引き抜き加工法に関する産業技術総合研究所の技術を基盤に研究を進め、マグネシウム合金を高精度で成形加工する技術を開発した。
具体的には、合金の押し出し温度や引き抜き速度といった各種条件パラメーターと肉厚の相関関係を調査し、肉厚精度に大きく関わるキーパラメーターを抽出。それらを最適化することで、マグネシウム合金を内径1.5〜3.0mm、肉厚110〜300μmの管材に成形加工することに成功した。
さらに、マグネシウム合金部材の組織について、引き抜きと熱処理の工程における最適な処理条件を調べて、合金の管、棒、線材が高い機械的特性と体内での分解性能を持つよう組織を制御できる技術を開発した。
不二ライトメタルは、管、棒、線材を製造する引き抜き加工設備に加えて、素形材となるマグネシウム合金を製造するための鋳造設備と押し出し設備を自社内に導入した。これにより同社単独で、医療機器部材向けのマグネシウム合金から加工品までを一貫して製造できる。
今後、同社では、各種医療機器の仕様に合致したマグネシウム合金加工品の量産化を目指す。
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