制御モデルと実装後の差をなくす、最適な並列処理をマルチコアに自動割り当て:モデルベース開発(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスの車載用マルチコアマイコン向けのモデルベース開発環境が、新たに複数の制御周期(マルチレート)によるシステムの開発に対応した。シャシー系やブレーキをはじめ、エンジン、駆動用モーターなどを対象に、制御モデルを構築した段階でマルチコアマイコンへの実装の仕方や、ECUとしての処理性能などを検証できるようになる。
6コアマイコンにも対応予定
今回発表した開発環境は2018年秋から提供を開始する。まずはシャシー向けで2コアのマイコン「RH850/P1H-C、P1M-C」に対応し、パワートレインなど向けで最大6コア搭載の「RH850/E2x」シリーズ(※)や、産業用の「RXファミリ」などにも順次適用する計画だ。今後は、マルチレート・マルチタスクの制御モデルの他、リアルタイムOS(RTOS)やAUTOSAR準拠の基盤ソフトウェア(BSW)の対応に向けた開発を進める。また、並列処理の動作検証にも対応を予定している。
(※)関連記事:「世界初」で「世界最高性能」、ルネサスが28nm車載マイコンをサンプル出荷
実装できないソフトウェアが上流でつくられないように
自動車の環境性能を向上するため、より複雑な制御が要求されており、処理性能を向上しながら消費電力低減を図ることができるマルチコアマイコンの優位性が高まっている。マルチコアマイコンに搭載するソフトウェアを効率よく開発するには、要求設計やシステム設計の段階で、ハードウェアの処理性能を正確に見積もりながら作り込んでいくことが必要になる。
また、自動車開発の上流工程では、要求やシステムの設計で制御モデルの活用が進んでいるものの、実装後のモジュールやシステムの検証で、設計時に想定した性能が出ないことによる手戻りが課題となっている。ルネサスは、モデルベース開発と実装後のズレを解決するのはツールベンダーではなく半導体メーカーの役割だとし、ハードウェアを提供するだけでなく、実装するソフトウェアの開発までサポートしていきたい考えだ。
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