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ポメラ DM30を分解――メカ・電気・デザインのコラボに優れた製品隣のメカ設計事情レポート(9)(5/5 ページ)

2018年6月8日発売のキングジム製の新製品『デジタルメモ「ポメラ」DM30』を分解する。

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6.左右底面カバー

 0.8mmのアルミ板金に塗装をしている。図15のように、四角の長穴からキースタンドが開きながら出てくる機構になっている。図10も参考にして欲しい。


図15 長穴の周囲に別部品を貼り付けている

 この長穴の内側端面には樹脂部品が両面テープで接着されている。理由は樹脂でできたキースタンドがアルミ板金の端面をすることによる傷防止、もしくはデザイン上のこだわりと考える。

 このアルミ板金には2種類の特殊なプレス加工が施されている。

 図16の写真左は半抜きのようであるが、裏面には凸がない。


図16 左右の底面カバーの特殊なプレス加工

 この形状の製作方法は、まずは小さな穴を開ける。次に裏面が凸にならないように金型を当て付けながら、円形状をプレスし段を作る。このプレスにより余った肉は、最初に開けた小さな穴に逃げるので、再度小さな穴を開け直す。

 写真右の形状は、最初に小さなベロ形状を、長い端面から(写真の)上方向に板厚分ほど高い位置で作成する。もちろん、小さなベロには曲げRが付いている。その後、写真の左側面に金型を当て付けながら、小さなベロ形状を上からプレスして、長い端面の位置にベロの高さを合わせるのである。非常によく形状が出ていると思う。

 この高いプレス加工の技術を考えると、先に述べた、長穴に貼り付く樹脂の別部品に代用する形状もプレス加工でできたのではないかとも思う。

7.電池部分

編集部より:公開当初「水銀電池」としていた表現を「コイン型電池」としました。お詫びして修正いたします。(2018年6月18日11時50分)

 コイン型電池を取り外すと図17の写真上のように、電池の型番号が白色で見やすく印刷されている。


図17 コイン型電池の下の印刷と電池の入れ方

 コイン型電池の交換のときに電池の型番を確認することはよくあるが、コイン型電池に刻印されている型番号の文字は非常に読みにくいので、この白色の印刷は非常に親切な設計だと思う。

 一方、交換したコイン型電池をはめ込むとき、図17の写真下左のように、指で上から抑えないと右上に小さく見えるバネがコイン型電池の下に潜り込んでしまい、コイン型電池が奥まで入り込まない。指で抑えながら、電池のフタを閉めなければならないが、この作業はとても難しい。できれば写真下右の赤色点線の位置にリブを作り、上からコイン型電池を押さえる機構になっていると良かったと考える。

 電池カバーは、その下にスライドするツマミがあり、図18の写真の状態ではロックされて開かないようになっている。


図18 電池カバー

 電池交換時のデータの保護のためと考える。しかし、ロック状態でも電池蓋は簡単に外すことはできる。改善の必要があると思う。



 いろいろコメントしましたが、全般的にはメカ、電気、デザインが非常によく連携して設計された製品と思います。また、設計構想もしっかりしていて、こだわりのある設計をしていると思いました。(終わり)

筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書



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