“10万円均一”で売り出す製造現場向けIoT基盤、日本電産に成算はあるのか:製造業がサービス業となる日(2/3 ページ)
日本電産は2018年3月、製造現場向けのIoTクラウド分析サービス「Simple Analytics」を発表。同社の製造現場で培ってきた知見やノウハウを基に開発したもので、サービス開発は日本電産が、販売とサポートはセゾン情報システムズが担当する。製造業である日本電産が、自社開発のIT関連サービスを本格的に外販するのは初めてのことだ。
自社開発のデジタル情報資産管理システムが重要な役割を果たす
Simple Analyticsで中核的な役割を果たしているのが、日本電産が自社開発したデジタル資産管理システム「GreenForest」だ。同社のグローバル展開に向けて開発したもので、2014年に稼働を開始している。社内で扱うファイル1つ1つにメタデータを付けて管理でき、Microsoft Office系やPDFだけでなく、映像や3D CADデータを含めて、Webブラウザ上から手軽に扱える。「社内ユースではかなり高い評価を受け、現在も広く活用している」(金嶋氏)という。
このGreenForestは、Simple Analyticsに先駆けて2015年から一部外販を始めたものの、あまり華々しい成果は上がらなかった。金嶋氏は「GreenForest単体では売るのが難しいかもしれないが、GreenForestのデジタル資産管理システムとしての優れた特徴を生かした新しいものを作れないかと考えた」と語る。
GreenForestの特徴は、製造現場関連を含めてさまざまなデータを取り扱えるとともに、それを表示できるところにある。「このGreenForestを、Simple Analyticsで表示する簡易分析の標準レポートの出し先にすることにした」(金嶋氏)。
セゾン情報の協力でさらなるブラッシュアップが可能に
Simple Analyticsの外販に向けては、さらにもう1段階のブラッシュアップが加えられた。ここで登場するのが、販売とサポートを担当するセゾン情報システムズである。
セゾン情報システムズは2016年9月、金融機関などで利用されているファイル転送ミドルウェア「HULFT」をベースに、IoTのデータ転送に最適化したデータ連携ミドルウェア「HULFT IoT」を発表している※)。ただし、それまでのセゾン情報システムズの主要顧客は金融系などであり、HULFT IoTの顧客として想定する製造業についてはこれから取り組みを強化するところだった。セゾン情報システムズ HULFT事業部 エンタープライズ営業部 Simple Analytics事業推進グループ グル―プ長の永田雅也氏は「そこで、HULFT IoTの評価で協力を仰いだのが日本電産だった。それが接点となり、2017年2月には、Simple Analyticsで協力していくことで合意できた」と述べる。
※)関連記事:ミッションクリティカルIoTに最適なデータ転送ミドルウェア、セゾン情報が発売
Simple Analyticsの事業展開にソフトウェアベンダーであるセゾン情報システムズが加わることで、IoTプラットフォームとしての開発は加速する。「オープンソース活用の関係もあり開発にトライ&エラーが多すぎる状況だったが、HULFT IoTなどの既に高い完成度を持つソフトウェアを組み合わせることで開発のスピードを高められた」(丸谷氏)。例えば、取得したデータをGreenForestまでどうやって持っていくかが課題になっており、それまでは手作業で対応したり、個別開発したりしていた部分が多かった。これをHULFT IoTなどが担うことで課題を解決することができた。永田氏と丸谷氏は「互いの足りないところを補い合って、うまくはまった」と声をそろえる。
2017年3月に両社で事業構想をまとめた後、同年4月には先行ユーザーへの評価を始められることになった。45日間で製造現場の見える化を実現したその先行ユーザーからは「スピードが速い、手軽でいいサービスだ」という評価を得ることができた。その後、同年9月に具体的な事業スキームを決め、2017年12月には両社による製販分離を決定。2018年以降の具体的な事業展開へのつながっている。
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