低コストに5mm単位で自車位置推定、自動運転バス実現へ:自動運転技術
愛知製鋼は「人とくるまのテクノロジー展2018」において、車両の位置を検知する「磁気ポジショニングシステム」を披露した。路面に埋設した磁気マーカーを車両の磁気センサーで検知し、5mm単位で自車位置を推定する。
愛知製鋼は「人とくるまのテクノロジー展2018」(2018年5月23〜25日、パシフィコ横浜)において、車両の位置を検知する「磁気ポジショニングシステム」を披露した。路面に埋設した磁気マーカーを車両の磁気センサーで検知し、5mm単位で自車位置を推定するという技術だ。
同システムは東京大学発のベンチャー企業である先進モビリティの自動運転バスに採用されており、国土交通省などが実施する実証実験で活用されている。走行ルートがあらかじめ決まっている路線バスなどに向けて提案を進めていく。
愛知製鋼は、ステンレス鋼の材料技術や表面処理技術を組み合わせて、センサーや磁石などを扱う電磁品事業を展開している。展示した磁気ポジショニングシステムは、車両の最低地上高である15〜20cmの高さに搭載した横長の高感度磁気センサーによって、磁気マーカーの位置と車両の中心とのズレを検出している。
センサーの精度向上により、薄く小さい磁気マーカーでも使用することが可能だ。路面にはフェライト磁石製の磁気マーカーを約2mの間隔で設置する。磁気センサーが磁気マーカーに付加されたGPS座標の情報を読み取ることで、正確なポジションニングが可能になる。低コストで施工可能だという。
磁気ポジショニングシステムのメリットは、GPSを受信しにくい屋内や地下、センサーが認識を苦手とする積雪や霧などの環境でも自車位置を推定できる点だ。車両側にセンサーを搭載するだけでなく磁気マーカーの設置が必要であることを踏まえると、まずは路線バスが有力だと見込む。空港や港湾など限定されたエリアで走行するAGV(無人搬送車)や、BRT(バス・ラピッド・トランジット、バスによる高速輸送システム)、地下駐車場でのバレーパーキングなどにも向けて提案していく。
磁気ポジショニングシステムは、国土交通省や内閣府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)の公道試験で使用。具体的には、滋賀県でGPSが届かない地域、長野県の山間部の急カーブが続く区間、雪が積もった冬季の北海道の公道でシステムの効果を実証した。
関連記事
- MaaSは鉄道など公共交通や都市計画にどのような影響を及ぼすか
フィンランド発で、モビリティのサービス化を示す「MaaS(Mobility as a Service)」という一大ムーブメントが起こってきた。公共交通機関やレンタカー、タクシー、レンタサイクルなどを組み合わせて、人の移動をシームレスに行うサービスを示す言葉だ。では今後、MaaSが普及すると、モビリティやサービス変革のみならず、都市交通や都市計画にどのような影響を及ぼすのだろうか。関係者にヒアリングを行った。 - 自動運転バスの課題、バス停にぴたり横付け停車する「正着制御」に挑む
SBドライブと先進モビリティは、沖縄県南城市で、公共バスへの適用を想定した自動運転バスの実証実験を開始した。今回の実証実験で特に重要な項目として挙げたのは、バス停にぴたりと横付けして停車させる「正着制御」である。 - 創業100年の路線バス会社の危機感、自動運転車で実証実験をスタート
SBドライブと岡山県内で路線バスを運営する宇野自動車は、自動運転バスのサービス実用化に向けた実証実験を開始する。 - HEREが位置情報サービスにcm単位の測位を活用、三菱電機と協業で
三菱電機とHEREは、位置情報サービスのさらなる高精度化に向けて業務提携を結んだ。HEREのクラウド位置情報サービス「Open Location Platform」と、車線ごとにセンチメーター級の自車位置測位を実現する三菱電機の「高精度ロケーター」を組み合わせてサービスを提供する。 - テープを貼るだけで自動走行、ライン敷設費用を抑えた無人搬送車
リコーインダストリーは「SFE2017」において、ビニールテープを貼るだけでライントレース可能な光学式無人搬送車を出展。ライン敷設費用を抑えて低コストで無人搬送車の導入が可能となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.