車載ネットワークの伝送速度は光通信で10Gbpsへ、高速化とEMCを両立:車載電子部品(2/2 ページ)
TE Connectivityの日本法人であるタイコ エレクトロニクス ジャパンは2018年5月22日、アダマンド並木精密宝石と共同で、伝送速度10Gbpsの車載ネットワークを実現できるデータリンクシステムを開発すると発表した。現行の車載ネットワークは最高伝送速度が1Gbpsの仕様が策定されているが「10Gbpsは世界初の取り組みになる」(両社)という。
国内自動車メーカーは光通信の車載ネットワークを採用するのか
現在、仕様が策定されている車載ネットワークとして最も高速なのは、伝送速度が1Gbpsで電気配線を用いる車載イーサネットのIEEE 802.3bpと、光ファイバーを用いるIEEE 802.3bvになる。今回発表された10Gbpsの車載データリンクシステムに対応する車載ネットワークは現時点では仕様が策定されていない。
小林氏は「10Gbpsの車載データリンクシステムで用いられるプロトコルはイーサネットが有力だが、他のプロトコルも想定して開発を進めている。IEEEなどにおける実際の仕様策定は、基本技術を確立してから1〜2年後に始まることになるだろう」と説明する。
また、MOST25やMOST150といった光ファイバーを用いる車載ネットワークは、欧州の自動車メーカーに広く採用されているものの、国内自動車メーカーはほとんど採用していないという課題がある。「車載ネットワークの高速化をさらに進める中で、電気配線を用いる車載イーサネットのEMCへの対応が容易でないことは確かだ。車載光通信技術の開発は国内企業がけん引しており、今回の10Gbps車載データリンクシステムの開発も、TE Connectivityの中では日本法人であるタイコ エレクトロニクス ジャパンが中心になって進めている。国内自動車メーカーに受け入れられる環境は醸成されつつあるのではないか」(小林氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CANプロトコルを理解するための基礎知識
現段階においてCANは車載ネットワークの事実上の標準といえる。だからこそ、その特長と基礎をしっかり押えておきたい - 次世代の車載ネットワーク「CAN FD」とは
セキュリティ対応や自動運転などの車両の高機能化に伴い、より高速な車載ネットワークが求められている。本稿では次世代の車載ネットワークの1つとして考えられているCAN FD導入の背景やプロトコルの概要ついて紹介する。 - 知っておきたいLINの基礎知識 その1
自動車のボディ制御に使われる通信プロトコル「LIN」。その基礎から、フレーム構造やネットワークマネジメントといった仕様までを解説する - 日本発の車載LAN規格「CXPI」は「CANとLINのイイとこどり」
日本国内で開発/策定された車載LAN規格「CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)」が、自動車技術会のもとで2019年のISO化に向けて動き出している。CXPIは、CANやLINの適用が難しかった部位の多重通信化を狙う。機器間を1対1でつないでいたワイヤーハーネスをCXPIで多重化できれば、車両の軽量化にもつながる。CXPIの開発の背景や、導入のメリットなどについて話を聞いた。 - 次世代車載ネットワーク FlexRayとは?
次世代車載ネットワーク通信プロトコル「FlexRay」。本連載では、その仕様から、現在の状況・今後の動向までを詳しく解説していく - 遅延時間を10分の1に、割り込み可能な次世代車載イーサネットを実演
ルネサス エレクトロニクスは、プライベート展「Renesas DEVCON JAPAN 2017」において、イーサネットTSN(Time-Sensitive Networking)の割り込み処理のデモンストレーションを行った。車載ネットワークとしての国際標準化を狙っている。