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ゴムのしなやかさと樹脂の強靭さ併せ持つ、ブリヂストンの新材料は無限の可能性:研究開発の最前線(2/3 ページ)
ブリヂストンは2018年5月17日、東京都内で会見を開き、ゴムと樹脂を分子レベルで結び付けた「世界初」(同社)のポリマー材料「High Strength Rubber(HSR)」の開発に成功したと発表した。2020年代をめどに事業化を進めるとともに、オープンイノベーションによって開発を加速し、タイヤなどブリヂストンの事業範囲にとどまらない展開の拡大も目指す。
耐破壊特性だけでなく耐候性も大幅に向上
ブリヂストンは2016年12月、天然ゴムに匹敵する耐破壊物性と低燃費性能を持つポリイソプレンゴムの合成に成功している。そこで用いられたのが、会田氏が長年研究を続けてきたGd触媒である。
このGd触媒にさらに改良を加えることで、反応性が全く異なる共役ジエンとオレフィンが1つの分子鎖の中に入るような共重合反応を起こせるようになった。今回発表したHSRは、この改良型Gd触媒によって合成したポリマー材料となる。「共役ジエンとオレフィンの割合を任意に制御することで、さまざまな特徴を持つHSRを得られる」(会田氏)という。
改良型Gd触媒を用いてHSRを合成した(左)。電子顕微鏡写真で見ると、HSRは1つの分子の中に共役ジエンとオレフィンが入ったポリマーになっていることが分かる。共役ジエンとオレフィンをブレンドして共重合しても、ゴムと樹脂の塊が混ざったものになるだけだ(クリックで拡大) 出典:ブリヂストン
HSRは、樹脂の強靭さが加わったことにより大幅に耐破壊特性が向上している。会田氏は、耐亀裂性、耐摩耗性、引張強度の試験結果を示すとともに、会見場に天然ゴムとHSRで作った輪ゴムを持ち込み、報道陣にその強靭さを体験させた。さらに同氏は「不飽和結合が多数あるゴムにとって、紫外線や酸化によって劣化が進みやすいことは課題の1つだった。HSRは、樹脂成分を含むことから、ゴムよりも耐候性が高い」と説明する。
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