品質保証体制を強化するためのIoT活用はどのように実践すべきか(その2):トヨタ生産方式で考えるIoT活用【実践編】(3)(3/3 ページ)
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」の利点を生かしたIoT活用について、実践編として、より具体的な「導入のポイント」や「活用する手段」を説明する本連載。第3回は、品質保証体制強化におけるIoT活用のうち「蓄積」について解説します。
(4)データのバックアップとリカバリー
そこで、分散方式で重要になるデータのバックアップとリカバリーについて簡単にポイントをまとめておきましょう。
- バックアップ:どこで障害が発生したら、どうリカバリーするかを検討して、バックアップの計画を立てる必要があります。例えば、PLC→収集用PC→蓄積用サーバといった構成では、PLCが故障すると設備が止まりますので、物が作れなくなります。データは収集できないので、設備を復旧させる対策のみで良いでしょう。収集用PCが故障すると、設備は動いているが、PCにデータが集められないため、PLCにある程度データを保持しておくか、PCを二重化する対応が必要となります。蓄積用サーバが故障すると、操業している間のデータが蓄積できなくなるため、PCに一定時間のデータを保持しておく必要があります。バックアップを日単位で取得しているのであれば、最低1日分のデータはPCに保持しておく必要があります
- リカバリー:上記のように、PCやサーバが故障した際の復旧時間を明確にした上で、バックアップの確保やリカバリー方法について検討します。リカバリー時間を短縮するには、低価格な機器類は予備品を用意しておいて差し替える方法、またはメーカーの保守サービスですぐに対処してもらう方法を、コストや復旧時間の観点から選択するとよいでしょう
3.まとめ
今回は、品質保証体制強化へのIoT活用のうち「蓄積」部分について説明しました。設備に情報機器を組み合わせて最適化を図りますが、特に見た目では分かりにくい、通信方式やプロトコルについてイメージできるように解説させて頂きました。
設備を制御する観点では、机上で算出したタクトタイムが比較的順守できます。しかし、情報処理を行う通信上では机上の計算通りの実測値が出ないことが一般的です。このため、実際に導入した経験のある有識者を入れてシステム構成を設計しないと、思ったより速度が出ないといったトラブル発生につながります。
特に今は、サイバー攻撃や内部からの情報漏えいといったセキュリティ対策も考慮しなければなりません。利便性と信頼性の両面から最適解を導き出す必要があり、システム導入のハードルも高くなっています。しかしながら、高い品質を維持できることは他社との大きな差別化につながりますし、データが蓄積されれば蓄積されるほど、一歩先の管理ができることは間違いありません。ぜひ前向きに取り組んで頂きたいと思います。
次回は、品質保証体制強化へのIoT活用における「活用」について解説します。
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筆者紹介
株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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