スマート工場が5G待望のキラーアプリに、期待集めるネットワークスライシング:IoTと製造業の深イイ関係(5)(2/3 ページ)
脚光を浴びるIoTだが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第5回は、5Gとスマートファクトリーの関係性にスポットを当てる。
工場の自動化に必然となるコネクティビティ
一方、さまざまな国に生産拠点や開発拠点を持つグローバル企業にとっては世界全域での工場のスマート化が必要となってくる。
自動車関連を中心に既に世界各国で事業を展開するボッシュ(Robert Bosch)は、マスプロダクションに加え、多種多様な製品をいかに現在のコスト以下でグローバル展開するかが課題であり、これを実現するには「コネクティビティ」が必然であると指摘する。ボッシュのアンドレアス・ミュラー(Andreas Mueller)氏は、同社は従来の4Gでも製造業分野で既にさまざまなソリューションを実現していることから「5Gである必要はない」(ミュラー氏)としながらも、5Gによってこれまでできていることが進化したり、課題解決に寄与したり、あるいはこれまで想像もしていなかったことができるようになる可能性があるとして期待を寄せている。
現在、工場は複数の課題を抱えている。一例をあげると、工場内のフィールドネットワークはラインごとに異なる通信規格が採用されていることが多く、仮に生産工程の1カ所でトラブルが生じても他の工程にはその状況がリアルタイムに伝達されないため、対応が遅れてしまう。
また、製造業を巡るバリューチェーンは国内外拠点から関連会社まで、複数のプレーヤーが複雑に絡み合っていることから外部との接続も必要となる。マスカスタマイゼーションが実現すると顧客からの注文もインターネット経由が主流となる。このように多様なプレーヤーと課題が絡み合う中で5Gの導入がきっかけとなり「さまざまな課題解決につながる糸口を見つけられるのではないか」と同氏は期待しているようだ。
実際にボッシュは、通信設備ベンダーのノキア(Nokia)とともに、工場のワイヤレス化に関する実証実験を行っている。その結果、5GがWi-Fiや4Gと比較してはるかに低遅延かつ安定した通信環境を提供できるとしている。ボッシュによれば、工場にとって生産ラインが大規模にストップすることよりも、一部のラインが短い時間止まってしまう方がより損害が大きくなるそうだ。よって今回の実験結果の低遅延かつ安定した通信環境を提供できる5Gは評価に値するとしている。
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