この記事は、2018年3月22日発行の「モノづくり総合版 メールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。
アップルの“ヘの字口”が示すもの
最近、製造業において「製造」のターンが来ているな、と感じることが多くなりました。工作機械やロボットなど生産財の出荷が好調に続いている他、スマートファクトリー化などへの投資も活発化しており「製造」領域の見直しや再評価が進んでいるように見えます。
製造業が「モノ」を作る業種である以上、「製造」は欠かせない工程です。しかし、モノが不足していた時代から、モノが充足し多様化や差別化が求められる状況になる中で、多くの製品でコモディティ化が進みました。特に電機業界では「スマイルカーブ理論」などで製造業務の付加価値の低下が指摘され、「製造」の価値が大幅に下がったのがここ20年の動きだったように思います。
「スマイルカーブ」は、笑顔の口のように左右の上がった曲線で示された、製造業の工程付加価値を表した図です。企画や設計開発、素材など、製品ライフサイクルの上流と、製品販売後のアフターサービスなど製品ライフサイクルの下流については、高い付加価値を維持するが、製造工程は付加価値が低くなっていることを表します。
ファブレス化の正解例とされたアップル
当時、この「スマイルカーブ」のおいしいところを最もうまく切り取っていると評価されたのが米国のアップル(Apple)でした※)。
※)関連記事:「アップル、サムスン以外はみんな危機」再生請負人が見た民生電機
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