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自律ロボットバトルに暗雲!? 過去最大規模の「ROBO-ONE auto」で見えた課題ロボットイベントレポート(3/4 ページ)

2足歩行ロボットによる自律バトル競技会「ROBO-ONE auto」が2018年2月24日、東京・お台場の日本科学未来館にて開催された。エントリー数が過去最多の34台となり、初めて予選が行われるなど盛り上がったが、課題も見えてきた。大塚実氏によるレポートをお送りする。

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センシングに大きな課題

 以前の大会では、ほとんど動けないロボットを見かけることもあったのだが、今回は予選が行われたこともあり、少なくとも「動ける」ことは確実。そういう意味では着実に大会のレベルは上がっており、1回戦からちゃんとした試合が見られるかも――と期待していたのだが、結論から言うと、決勝トーナメントはやや不満が残る結果となった。

 まず、とにかく相手が見つけられない。全試合を通し、「2台のロボットが離れた場所をウロウロしているだけ」というシーンがあまりにも長く、実際に接近して攻撃している場面はかなり限定的だった。それでも楽しめる人は楽しめるのだが、良く知らない一般の観客が見れば「こんなものか」と思って帰ってしまうだろう。

なかなか出会わない……(クリックで再生)

 これは恐らく、センサーに原因がある。出場したロボットを全て取材したわけではないので、例外もあるかもしれないのだが、筆者が見た中では、探索に使われていたのはPSDセンサーばかり。PSDにもロングレンジ向けの大きなタイプはあるのだが、見たところ1〜2m程度までしか使えない小型センサーが多かった。これだと離れたら見えない。

多くのロボットが、こういったタイプのPSDセンサーを使っている
多くのロボットが、こういったタイプのPSDセンサーを使っている(クリックで拡大)

 アナログ出力のPSDセンサーは、ロボット用コントローラーでも使いやすい。アナログ入力端子に直結するだけで簡単に利用できるし、A-D(アナログ−デジタル)変換した値を見てモーションを分岐させれば、プログラミング無しでも、それなりの自律制御を行うことができる。I2C仕様のセンサーとかだと、こうは行かない。

 ただ、使いやすい一方で、限界も見えている。発展性を考えれば、光学カメラや深度センサーをうまく活用して欲しいと思うのだが、そういったロボットが見られなかったのは残念だった。大会を主催する二足歩行ロボット協会理事長の西村輝一氏も、閉会式で「センシングをもうちょっと頑張って欲しい。カメラを付けてもいいんだよ」と述べていたが、その通りだろう。

技術の発展には何が必要か

 前回までは、光学カメラや深度センサーを使ったロボットもいたのだが、PSDセンサーばかりになってしまったのは、技術的に簡単というだけでなく、「それで勝ててしまうから」という理由が大きいだろう。

前回はまだ光学カメラを搭載したロボットもいたのだが……
前回はまだ光学カメラを搭載したロボットもいたのだが……(クリックで拡大)

 仮に、光学カメラの画像認識で遠方から発見し、接近できたロボットがいたとしても、近づけばPSDセンサーの視野に入り、相手からも見つけられる。両者がお互いに相手を認識したら、結局は攻撃力の勝負になる。「倒した方が勝ち」というルールになっている以上、高度なセンシングに対するモチベーションは低いと言わざるを得ない。

 現在、autoの出場ロボットは本戦とのダブルエントリーがほとんどで、auto専用機は少ない。本戦用の機体に大きなセンサーやマイコンボード等を追加搭載するのは厳しく、簡単にできるのは各所にPSDセンサーを付けることくらいだ。

 ダブルエントリーできるからこれだけ参加台数が増えたともいえるが、同じようなセンサーを使った同じような制御だと、結局、もともと強い機体が勝つだけになり、面白くはない。本戦の"劣化コピー"にならないよう、何らかの独自色を打ち出せなければ、競技としての魅力は小さく、早々に飽きられてしまう恐れもある。

 今後、技術的な発展を促すためには、本戦と同じルールでは無理があるように思う。例えば、倒れようが倒れまいが、とにかく攻撃を先に当てた方に1本を与えたり、先に発見して近づいた方に何らかのアドバンテージを与えたりするなど、まずは攻撃力ではなく、アルゴリズム重視の勝負にする必要があるのではないだろうか。

 同時に、参加者の技術力向上を図る取り組みも重要だ。技術カンファレンスを開催したり、サンプルプログラムを公開したりして、情報を共有していけば良いだろう。

 現状のPSDセンサーのみによるバトルは、いうなれば条件反射や本能レベルの戦いだ。個人的には、知能が入ったロボットに登場して欲しいし、そういったロボットによる駆け引きも見てみたい。さらに人間の操縦より強くなれば最高だ。それを実現するために、長く続けられる大会になって欲しいと思う。

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