“捨てるために作る”モノづくり、世界中に正しく届けるための工夫:メイドインジャパンの現場力(14)(1/2 ページ)
製造業の役割はモノを作るだけではない。顧客のもとに正しくモノを届けるという役割も担う。その役割を、環境への配慮なども含めてより高いレベルで達成しようと取り組んでいるのが京セラドキュメントソリューションズである。
「製造業のグローバル化」は最近では当たり前になっているが、実際に世界中にモノを送り届けるというのは大変なことだ。運搬する道路の状況も異なれば、モノに対する文化なども異なるため、ぶつけたり、落としたりすることで、製品の故障や破損などが生まれる。こうした状況でも壊れずにモノを届けるために製造業側では梱包への工夫が進んでいる。
京セラドキュメントソリューションズでは、安全にモノを運ぶだけではなく、さらに環境配慮の取り組みも含めて、梱包ソリューションの強化を進めている。取り組みについて、京セラドキュメントソリューションズ 技術本部 プリンター2統括技術部 第41技術部 MD42課責任者の中村敏之氏に話を聞いた。
梱包、包装の3つの役割
「梱包や包装に主に3つの役割がある」と中村氏は語る。その3つとは以下である。
- 内容物の保護(製品の品質を守る、維持する)
- 取り扱いにおける利便性(荷役、保管、輸送の効率化)
- 情報伝達・表示(内容の明確化、販売促進)
中村氏は「包装材は消費者や顧客の手元に無事にわたったときには不要物となる。そのため、適正な仕様にすることが重要。3つの役割をできる限り少ないリソースで達成するということが目標になる。多すぎても必要以上のごみを生むことになり、少なすぎると強度不足となる。その最適なバランスを実現するのが重要だ」と包装材設計の役割について述べている。
ただし、そのバランスが非常に難しい。製品が正しく梱包されて、想定された形で搬送されていれば大きな問題は生じないはずだが、世界にはさまざまな環境が存在し、物流に関する対応もさまざまである。屋外で製品が放置されるような貨物ターミナルも存在すれば、規定以上の高さに積み上げて、箱が破損するような場合もある。トラックとフォークリフトでの移動を想定したものを、人が担ぎ上げて運んでいたような地域も存在する。外装ケースに問題がなかったとしても当時想定していなかった横向きの積み上げで保管されており、顧客のところに届いたときに破損が発覚するケースが頻発したようなケースもあるという。
中村氏は「新興国での輸送が厳しそうな印象もあるが、輸送条件が厳しいのは新興国だけではない。先進国でも国民気質などによって荷扱いが悪いところも存在する。こうしたさまざまな環境に対応できる包装材や梱包材でなければならない」と難しさを語る。
製品だけでなく環境も守る
京セラドキュメントソリューションズではさらに、1992年に発売した地球環境へのやさしさをアピールポイントとしたプリンタ「エコシス」の発売に合わせて、包装材の環境対応を強化。従来のプラスチック系の梱包材などに対し、基本的には外装から梱包材まで全て紙系の素材を使うことを目指した。紙系の素材は全世界でリサイクルの仕組みが出来上がっており、環境負荷を低減することが可能だからだ。
主に段ボールを使用する外装ケースの他、従来は発泡スチロールなどを使っていた緩衝材なども段ボールやパルプモールドを採用。強度などは考慮しつつ、最大限紙系素材を増やす設計に取り組んだ。中村氏は「包装材や梱包材が顧客の手元に届くまでの役割だと考えると、環境負荷が少ない素材を必要最小限使い、開梱などもしやすいということがエコだ。紙系素材の拡大はその流れから生まれた」と中村氏は述べている。
ただ、紙系素材にも課題はある。コストと強度の問題である。京セラドキュメントソリューションズでは、こうした課題を梱包材の設計力でカバーした。例えば、段ボールと新聞古紙を水に溶かして成形したパルプモールド緩衝材では、従来は20kgが強度的に限界だとされてきたが、設計の工夫を重ねたことで35kgまで引き上げることに成功。廃棄物の削減を実現したという。
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