第4次産業革命であらためて強調したい「モノの価値」:いまさら聞けない第4次産業革命(20)(2/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第20回となる今回は、データの価値が訴えられる第4次産業革命において、あらためて強調したい「モノの価値」について解説します。
データ重視の第4次産業革命でなぜ「モノの価値」が重要なのか
さて、生産技術部長に加えてIoTビジネス推進室という肩書も背負うことになった矢面さんが今日も印出さんを訪ねてきています。
印出さん、こんにちは。ちょっと相談がありまして……。
毎回、毎回、いろいろ抱えているわね。
そうなんです。何でこんなにいろいろ起こるんですかね。実は、IoTビジネス推進室の取り組みで、いろいろ社内で話をしているんですけど、いろいろもめていまして。
どうしたの?
「第4次産業革命の価値はデータだ」や「『モノ』から『コト』へのシフトだ」とかを社内でいろいろ説明していたら、製品部門がちょっと怒っちゃいまして。
何で怒っちゃったの?
「われわれの価値はもうないということか」と……。私もモノづくりの人間ですから、彼らが怒る理由も分かるんですけど、「モノ」単体の価値は相対的には下がることも理解しているので、どう説明したらよいのか悩んでいるんです。
なるほどね。見方だけの問題のような気がするけど、難しいものね。「データ」が大事になるからこそ、重みを増す「モノの価値」があるのに。
ど、どういうことですか?
前回も触れましたが、第4次産業革命は「データ」を主軸とした新たなビジネスモデル構築の動きです。しかし、その中でデータを生み出し、収集する役割を担うのはまさに「IoT」の中での「Things」の役割になるのです。こう考えると「データ」をどのようにセンシングし、収集していくのかということは、かなりの部分を「モノ」に頼ることになります。
第4次産業革命などが注目を浴び始めた3〜4年前は「とにかくデータを集めてそれを分析すればよい」という考えもありましたが、通信コストやストレージコストなどが膨大にかかる上に、意図のないデータを大量に集めたところで、素晴らしい知見が生み出せるケースはほとんどありません。良い分析を実現するためには、良いデータが必要になります。
そのため、2017年以降は「エッジコンピューティング」が大きな注目を集めるようになりました。エッジコンピューティングで求められる役割はいくつか存在しますが、そのうちの1つが「データの選別」です。つまり、現場側で上がってくるデータを全て分析するのではなく、現場側である程度ふるいにかけることで、効果的な分析を行いたいとする動きです。
こうした状況を考えると、そもそも現場で「どういうデータをどのように取るのか」ということが非常に重要であるということが分かります。正しいデータを取るという末端の「モノ」の役割は、従来とは異なる意味で重要性を増しているといえるわけです。
なるほど、そういう考え方をするといいんですね。
前回も「データを取りやすくする」や「関連するデータセットを含めて提供する」ということが、第4次産業革命時代の部品メーカーにとってのチャンスという説明をしましたが、まさに、このデータ取得のハードルを下げられるというのが「モノ」を持つメーカーの強みといえるのです。
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