AIとIoTに5Gも加わった「CES 2018」、そして全てのモノがデジタル化される:CES 2018レポート(1/2 ページ)
情報通信総合研究所が「CES 2018」について報告。グーグルとアマゾンによる音声認識AIの激しいつばぜり合いや動画配信サービスによる業界再編などについて紹介した他、AIとIoTに5Gが融合しつつあることもポイントとして取り上げた。
情報通信総合研究所は2018年1月31日、東京都内で会見を開き、「CES 2018にみるライフスタイルの変化」と題して消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」(2018年1月9〜1月12日、米国ネバダ州ラスベガス)について報告した。
会見に登壇したのは情報通信総合研究所 副主任研究員の吉岡佐和子氏だ。吉岡氏はここ数年のCESに連続して参加してきた中で、「2015年はドローン、2016年はVR、2017年はスマートスピーカー(Alexa)が脚光を浴びた。2018年は、特定の製品/技術ではなく、さまざまな分野でいろいろなトピックに注目が集まったのではないか」と語る。
また、CES 2018で起こった、後世まで語り継がれるであろう話題を3つ紹介した。1つ目は、2日連続降り続いた雨で展示会場に雨漏りが発生し、漏水による停電が起こったことだ。「どんな素晴らしい技術も電気がないと全くダメになる」(同氏)。2つ目は、CES初参加となるグーグル(Google)がCESの会場だけでなく、ラスベガスの街全体を「Hey, Google」の文字でジャックしたことだ。「アマゾン(Amazon)のAlexaにスマートスピーカーで先行されているイメージを覆そうという意気込みを感じた」(同氏)。そして3つ目は、未来を形成する技術として「5G」がトップで紹介されたことだ。「CESと言えば通信キャリアの存在感が最も薄いことが特徴だった。そのCESで5Gがキーワードのトップにくるのは、時代の変曲点を示す事実だ」(同氏)という。
音声認識AIで激しくつばぜり合うグーグルとアマゾン
吉岡氏は、これらの話題の他にCES 2018のポイントを2つ挙げた。1つはOTT(Over the Top)の存在感だ。OTTとは、メッセージや動画、音声、SNSなどのコンテンツサービスやその事業者のことだ。LINE、Twitter、Facebook、アマゾン、YouTube(グーグル)、Hulu、Netflixなどが知られている。
これらOTTは家庭用デバイスに入り込もうとしており、最も有力な技術がスマートスピーカーにも用いられている音声認識AI(人工知能)だ。2017年にAlexaで注目を集めた音声認識AIだが、2018年はこれに対抗するようにCES初出展のグーグルが、自社やパートナーのブースで「Google Assistant」をアピール。対するアマゾンも、ブース出展に加えてAlexa関連のカンファレンスを2日間開催し、さらなる普及拡大を進める姿勢を見せた。
吉岡氏は「アプリケーションの実行という観点で、場所が限られるPCでの入力から、場所を選ばないスマートフォンでの入力になって、まず空間の自由が得られた。音声認識AIは、手と目を自由にしたという意味でさらに新たなものを生み出す可能性がある」と説明する。
音声認識AIについては、2強であるアマゾンとグーグルでも、それぞれ得意分野が分かれる。アマゾンがデバイス連携を得意とする一方で、Web検索はグーグルがリードしており、利用シーンごとに一長一短がある。「例えばLG電子の場合、テレビはグーグル、冷蔵庫はアマゾンと使い分けている」(吉岡氏)という。
OTT関連では、動画配信サービスが業界再編を生み出していることも指摘した。その主役になっているのがNetflixとアマゾンの「Amazon Prime」だ。新興の動画配信サービスに対して、既存のメディア大手企業はM&Aを進めている。2016年10月にAT&Tがタイムワーナー(Time Warner)を、2017年12月にはディズニー(Disney)による21 Century FOXのエンターテインメント部門の買収を発表しているが「これも全て、1本あたり1億米ドルともいわれるほどに制作コストが高騰しているコンテンツを強化するためだ。Netflixは年間で80億米ドルを投資する方針だが、これに対抗するためM&Aで資本力を強化しようとしている」(吉岡氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.