革新企業トップ100で日本が最多に返り咲き、日東電工と富士電機が受賞講演:知財ニュース(2/3 ページ)
クラリベイト アナリティクスは、知財/特許動向の分析から世界で最も革新的な企業100社を選出する「Top 100 グローバル・イノベーター 2017」を発表。前回の2016年は100社中の国別企業数で2位だった日本だが、2017年は米国を抜いて再び1位に返り咲いた。会見では、7年連続受賞の日東電工と初受賞の富士電機が技術開発戦略を説明した。
7年連続受賞の日東電工のビジネスモデル特許とは、富士電機は念願の初受賞
クラリベイト アナリティクスが行った会見では、7年連続受賞となった日東電工と、今回が初受賞となる富士電機の研究開発担当役員が参加し、それぞれ特許戦略の方向性を説明した。
2018年が創業100周年となる日東電工は、液晶ディスプレイ向けの偏光板など情報機能材料を中核に、テープ関連、自動車材料、回路・半導体材料、ライフサイエンスなどの事業を展開している。同社の成長の原動力になってきたのは、進化を続ける薄型ディスプレイパネル(FPD)に対して、市場ニーズに合った光学フィルムを展開してきたことだ。同社 取締役 専務執行役員 CTO 全社技術部門長の梅原俊志氏は「液晶ディスプレイだけでなく、近年注目を集める有機ELディスプレイにも対応している」と語る。また、2000年代に厚さ約30μmだった偏光板が現在では厚さ約5μmと超薄型になる中で「これだけ薄くなっても反りにくい偏光板にするには、プロセスと材料の双方を組み合わせた技術が必要。関連する特許も200件以上を取得済みだ」(梅原氏)という。
日東電工の取り組みで興味深いのが、「Roll to Panel」というビジネスモデル特許だ。2009年に不況に陥った際に、偏光板のコスト削減を実現しつつ、日東電工と顧客企業の双方の収益を確保するため導入を進めたものだ。一般的に偏光板は、偏光板メーカーの工場で生産した原反(ロール)を、顧客の求めるサイズのシートに裁断して出荷する。Roll to Panelでは、日東電工は工場からロールを出荷し、顧客の液晶パネル工場のライン内でロールからの裁断、パネルへの貼り付けを行う。梅原氏は「ロール表面の欠点情報も一緒に送っており、その部分を避けて裁断すれば、無駄になる材料コストを低減できる」と説明する。
このRoll to Panelは、偏光板メーカーの競合他社にもライセンスしている。「2014年から、クローズ戦略から標準化戦略に移行し、競合他社にもライセンスしている。業界の成長のために、高額なライセンス料率は設定していない。実際に2017年時点で、液晶テレビの約5割がRoll to Panelを採用している」(梅原氏)という。
初受賞の富士電機は、パワエレシステム、発電、電子デバイス、食品流通の4事業を展開している。2016年度の売上高は8378億円で、100周年を迎える2023年に売上高1兆円の達成を目指している。研究開発関連では、2017年4月に、製品開発に関わる技術開発は各事業本部が、先端要素技術は全社にまたがる技術開発本部が担当する体制となった。富士電機 執行役員 技術開発本部長の近藤史郎氏は「強いコンポーネントを創出し、その強いコンポーネントでシステムを強化する。そしてシステムによる海外事業拡大を目指すのが当社の事業戦略だ」と述べる。
この事業戦略を体現しているのが、太陽光発電システムだ。業界に先駆けて開発したパワー半導体「RB-IGBT(逆阻止IGBT)」を用いることで、パワーコンディショナーの変換効率で世界最高の98.5%を実現した。そしてこのパワーコンディショナーを中核に太陽光発電システムの事業展開を広げている。太陽光発電システム事業関連の特許は、コンポーネントが93件(海外比率47%)、パワエレ/制御機器が241件(同44%)、システムが27件(同41%)となっている。
また富士電機全社の特許保有件数も増えており、2016年度末は9853件で、2017年12月末には約1万2000件となった。初受賞の理由については「『成功率』の向上が大きい。2010年ごろは50%強だったが、現在は約80%になっている。パワエレや半導体の技術者が一体となった研究開発プロジェクトを進めるような体制としたことが、成功率向上の一因になっている」(近藤氏)という。
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