LIXILが250個のセンサーを設置したIoTハウスで見据える、スマートホームの将来像:製造業×IoT キーマンインタビュー(1/3 ページ)
建築材料と住宅設備機器の国内最大手企業であるLIXILは、IoT活用によるスマートホームの実現に取り組んでいる。同社 Technology Research本部 システム技術研究所 所長の三原寛司氏に、住まいへのIoT活用の実証実験の場となる「U2-Home II」での取り組みや、スマートホームにおけるIoT活用の可能性などについて聞いた。
LIXILは、2011年にトステム、INAX、新日軽、東洋エクステリア、サンウェーブ工業の5社が統合して発足した、建築材料と住宅設備機器を扱う国内最大手の企業だ。子会社や関連会社を含めたLIXILグループの2016年度(2017年3月期)の連結業績は売上高1兆6322億円、営業利益898億円に達する。
LIXILでは、多くの製造業が注目するIoT(モノのインターネット)についても「豊かで快適な住生活」という視点からさまざまな取り組みを進めている。例えば2017年12月には、家電やデジタル機器だけでなく、玄関ドアや窓シャッターなどの建材までIoTでつながる「住まいのIoTリンクシステム」を発表。2018年4月に全国で発売する計画だ(関連記事:LIXILが“住まいのIoT”に参入、国内で初めて建材とスマートスピーカーが連携)。
そこで、LIXILでIoT関連をはじめデジタル関連技術の研究開発を担当する同社 Technology Research本部 システム技術研究所 所長の三原寛司氏に、IoTやスマートホーム関連の取り組みについて聞いた。
本連載の趣旨
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist LIXILではこれまで、IoTについてどのような取り組みを進めてきたのでしょうか。
三原氏 現在「IoT」という言葉はバズワードとして注目されている。しかし、LIXILとして統合する前、トステムやINAXなどが個別に事業を展開していたころから、スマートプロダクトやデジタル技術の動向を見ながら、それらを住まいという空間にどのように活用していくかについてかなり長い期間取り組んできた。IoTというブームが来たから取り組み始めたわけではない。
ただし、現在のIoTという盛り上がりによって、従来は住宅内で何をするかという考え方が中心だったところに対して、クラウドなどを使って住宅外とどうつなげていくかという視点が入ってきた。私が所属するシステム技術研究所では、IoTやデジタル技術、ビッグデータなどに関わる研究開発を担当しており、住まいへのIoT活用についてさまざまな検討を行っている。
MONOist 今回のインタビューは、住まいへのIoT活用の実証実験の場になっている「U2-Home II」で行っています。ここU2-Home IIの狙いについて教えてください。
三原氏 トステム時代の2005年に策定した「未来の住宅構想」では、住宅内がネットワークで結ばれ、自動制御によりコンピュータを意識しなくても快適に保たれる住宅がコンセプトになっていた。そして2009年から、安全、快適、省エネの実現に向けた実証実験住宅として千葉県野田市に立ち上げたのが初代の「U2-Home」になる。
U2-Homeでは、住生活に関わるデータについて3つのレベルで考えている。レベル1の「人に伝達」は、生活に必要な情報を住空間が伝えるというものだ。レベル2の「住環境を制御」は、センサーで取得した温熱、空気、光、音などのデータをベースに住環境を快適に制御する。そしてレベル3の「高度な利用」では、クラウドやビッグデータを用いて、介護、医療、防犯、エネルギーなどに関わるより高度な情報とサービスを提供する。
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