IoTを取り巻くエコシステムの選択肢をより豊かにしていく――Arm:特集「Connect 2018」(1/2 ページ)
IoTデバイスの中核となるプロセッサで最も大きな存在感を持つArmだが、2014年ごろからIoT関連サービス事業への注力を続けている。英国本社でマーケティングアンドセールス担当バイスプレジデントを務めるマイケル・ホーン氏に、ArmがなぜIoT関連のサービス事業に注力しているのか聞いた。
2018年はIoT(モノのインターネット)がさらに発展、拡大する年になることは確実だ。2015年までをホップ、2016〜2017年をステップとすれば、2018年こそがジャンプの段階に他ならない。「IoTへの取り組みが遅い」とよくやり玉に挙げられる日本だが、それでも多くの企業からIoTに関する事例が多数出始めている。
IoTがモノのインターネットである以上、末端であるエッジ側のデバイス、IoTデバイスの果たす役割が重要になる。組み込みAI(人工知能)によるエッジコンピューティングや、インターネットにつながるためのセキュリティ機能など、従来の組み込みデバイスからIoTデバイスになるために必要なものは多い。
IoTデバイスの中核となるプロセッサで、最も大きな存在感を持つ企業がArmだ。ソフトバンクが2016年7月に約3兆円もの資金をつぎ込んで買収したこともあって注目を集めたが、今後のIoT時代ではさらに大きな存在になる可能性が高い。例えば、同社のプロセッサコアを搭載するチップの出荷数は1991〜2013年の22年間で約500億個だったが、2014〜2017年の約4年間でその約500億個を出荷したという。そして、今後2018〜2021年の4年間で約1000億個のArmチップが出荷されると予想しているのだ。
プロセッサコアで知られるArmだが、2014年ごろからはISG(IoT Service Group)と呼ぶ事業部門を設けて、IoT関連のサービス事業への注力を続けている。ISGでは、クラウド開発環境の「Mbed」、IoTデバイス向けのOS「Mbed OS」、IoTデバイスの管理に用いるクラウドプラットフォーム「Mbed Cloud」など展開している。
プロセッサコアで圧倒的に優位なポジションを確保するArmはなぜISGに注力しているのか。Armの英国本社でマーケティングアンドセールス担当バイスプレジデントを務めるマイケル・ホーン(Michael Horne)氏に話を聞いた。
MONOist Armといえば「Cortex-A」「Cortex-M」といったプロセッサコアが主力事業です。現在、Mbed OSやMbed Cloudといったプロセッサコアとは全く異なる事業に注力しているのはなぜですか。
ホーン氏 オープンソースソフトウェアで無償利用可能なOSであるMbed OSは、IoTデバイスを短期間で開発するのに役立つ。実際に、開発期間の8割を削減できるという話もある。また、IoTデバイスがインターネットにつながる以上、セキュリティは極めて重要だ。Mbed OSとMbed Cloudの組み合わせによって、電子認証やクラウド接続、ファームウェアアップデートといったIoTデバイス管理が極めて容易になる。
IoTデバイス管理のソリューションは他にも幾つかあるが、さまざまなクラウドにつなげられるようにするには業界標準にのっとったものが必要だ。Mbed OSとMbed Cloudは、OMA(Open Mobile Alliance)の「Lightweight M2M」というオープンな標準規格に基づくAPIを用いており、“つながる”という意味で使いやすいのではないかと考えている。
MONOist Mbed OSは無償ですが、Mbed Cloudは有料のサービスです。これは価格面でユーザーにとって受け入れ可能なのでしょうか。
ホーン氏 典型的なSaaSであるMbed Cloudは、使った分だけの支払いで済むのでコストを抑えられる。デバイス当たり、月当たりでサブスクリプション契約を結ぶことになるが、そのコストは受け入れ可能だ。
こういったビジネスモデルは、何らかのIoTソリューションを開発する企業にとっては問題なく受け入れられるのではないか。データを管理するパブリッククラウドに支払うのと同じ感覚で、IoTデバイス管理ソリューションであるMbed Cloudにも+αで少額を支払うイメージだ。
Mbed Cloudの価格は公開していないが、1デバイス当たり月間で数セントのレベルと思ってもらえれば問題ない。もちろんボリュームディスカウントもある。
MONOist パブリッククラウドとMbed Cloudは競合しないのでしょうか。
ホーン氏 ユーザーは、データのやりとりや管理をするためにパブリッククラウドを利用している。これに対してMbed Cloudは、IoTデバイス管理の選択肢の1つであり、パブリッククラウドの用途とは異なる。Armとしては、ArmアーキテクチャのプロセッサとMbed OS、Mbed Cloudをそろえるだけで、IoTデバイスとクラウドをきちんと接続するベストなセキュリティを実現できると考えている。
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