Graph500の1位にスパコン京、6期連続で:CAEニュース
理化学研究所らによる国際共同研究グループは、スーパーコンピュータ「京」が6期連続で「Graph500」の1位に選ばれたと発表した。ビッグデータの処理で重要となるグラフ解析において、最高レベルの評価を得た。
理化学研究所と九州大学、東京工業大学、スペインのBarcelona Supercomputing Center、富士通、フィックスターズによる国際共同研究グループは2017年11月16日、スーパーコンピュータ「京」が6期連続で「Graph500」の1位に選ばれたと発表した。運用開始から5年以上が経過した京が、現在でもビッグデータ解析に関して世界トップクラスの能力を持つことが実証された。
Graph500は、大規模グラフ解析に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキングだ。今回、Graph500の測定に使われたのは、8万8128台の京のノードのうち、8万2944台。約1兆個の頂点を持ち、16兆個の枝から成るプロブレムスケールの大規模グラフに対する幅優先探索問題を0.45秒で解いた。ベンチマークのスコアは3万8621GTEPSだった。
今回の成果は、京が規則的な行列演算だけでなく、不規則な計算の多いグラフ解析でも高い能力を持つことを実証し、さまざまな分野のアプリケーションに対応できる高汎用性を示した。同時に、京の性能を最大限に活用できる研究チームの高度なソフトウェア技術も示した。
大規模グラフ解析の性能は、複雑なデータ処理が必要なビッグデータの解析において重要となるものだ。例えば、インターネットのソーシャルサービスでは、「誰が誰とつながっているか」といった関連性のある大量のデータを解析する際にグラフ解析が使われる。また、サイバーセキュリティや金融取引の安全性担保、脳神経科学における神経機能の解析、タンパク質の相互作用分析など科学分野でも用いられ、応用範囲が広がっている。
国際共同研究グループはプログラムのオープンソース化を行い、GitHubレポジトリより公開中。今後は、大規模高性能グラフ処理のグローバルスタンダードを確立していくとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- シミュレーションの今昔、未来を変えるスパコン「京」
「京を使って、風洞実験の代わり」ではなく、「風洞では不可能な検証」すなわち「風洞では到底再現できない、リアルな実機走行に極めて近いシミュレーションを実現する。2013年5月30日開催「MSC Software 2013 Users Conference」講演より。 - スパコン「京」を使った設計が無料で試せる日がくる?
東大生技研の小野謙二氏が取り組むスパコン京を活用した設計システム。2013年には企業が無料で利用できるようになる。 - SPring-8×J-PARC×京を組み合わせた高度タイヤ解析技術、住友ゴムが開発中
住友ゴム工業は、独自の新材料開発技術「4D NANO DESIGN」をさらに進化させた「ADVANCED 4D NANO DESIGN」の開発を進めている。大型放射光施設「SPring-8」、世界最高クラスの中性子実験ができる「J-PARC」、スーパーコンピュータ「京」を組み合わせることで、タイヤに関するさらに高度なシミュレーションが可能になるという。 - 自分の好奇心を満たすためだけに、ものをつくってはダメ。使ってもらえて初めて意味がある――スパコン「京」プロジェクトリーダー 渡辺貞氏
2011年6月、明るいニュースが飛び込んできた。理化学研究所などが開発してきたスーパーコンピュータ「京」が、LINPACKベンチマークで8.162ペタフロップスを記録。当時、世界最速のスパコンとして認められたのだ。「世界最速」の称号を日本のスパコンが得たのは、地球シミュレータ以来のこと。その後、2011年11月には10.51ペタフロップスを達成。2期連続で世界最速のスパコンとなった。実は「京」の開発プロジェクトをリードした渡辺貞氏は、地球シミュレータにも携わっていた人物。日本のスパコン開発を牽引してきた第一人者が若者に向けて送るメッセージとは――。